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《小説》おばあちゃんの手紙

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2023年2月の記事一覧

おばあちゃんへの手紙 エピローグ01

おばあちゃんへの手紙 エピローグ01

夢を見た。

辺り一面夕焼けに染まっている。

どこか見覚えのあるような
懐かしさを感じる街の中だ。

隣には我が愛する細君がいて、
一緒に歩いている。

ふと私は気づいた。

これは夢だな、と。

夢を夢と気づいて見るものを
明晰夢というそうだが、
その類いのものだろう。

好奇心が湧いて、
隣の愛に確かめてみた。

「これ、きっと夢だよね。」

「うん、そうかもしれないね。」
あっけらかんとし

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おばあちゃんへの手紙 エピローグ02

おばあちゃんへの手紙 エピローグ02

中はがらんとして何もなく静かだった。

しかし、
間違いなくその頃の家であり、
おばちゃんの供養の旅が
始まるきっかけとなった。

夢に出てきた家だ。

ただその時は、

中から若返ったおばあちゃんが出てきたり、
母と夕食の支度をしていたりと、
何かと慌ただしかったのだが、

今回は静まり返っていた。

それどころか
家具も調度品も一切なく、
ただがらんとした家の中の
空間が広がるばかりだった。

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おばあちゃんへの手紙 エピローグ03

おばあちゃんへの手紙 エピローグ03

大きく目を見開いて私の顔を見返してきた。

なんと
そこに書き記されている文字は、

見飽きるほど見慣れた私の文字だった。

しかも
書いてある内容を読めば、

まさしく
あの夢の後
おばあちゃんへの返事を書き、

仏壇に供えた、
あの手紙そのものだった。

「ありがとう、ありがとう。」と幾度となく
書き連ねられたエピソードたち。

「ごめんね、ごめんね、ごめんなさい。」と
謝り続ける思い。

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おばあちゃんへの手紙 エピローグ04

おばあちゃんへの手紙 エピローグ04

「最後のここの文字は
パパさんの文字ではないですね。」

「えっ。」
慌ててその文字に目を落とす。

私の手紙の末尾に記されたその一文には、
こう書かれていた。

“追伸、この手紙は私の誇り。
たくさんのありがとうをありがとう。

愛さん、
悟を選んでくれてありがとう。
悟をよろしくお願いしますね。

引き出しの中のもの、もらってください。
これで心置きなく旅立てます。”

2人して、それは号泣の

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