ゴミステーション
2年前に引っ越してきたここは隣人も階下の人もいい感じで、騒音などもないアパートだ。
たまにカラスが尋常ではないくらいカーカー鳴いているのを見かけるのも気にならない、どころかYouTubeで「カラス 鳴き声」で検索をかけてうちの窓から音を聴かせ交信を図ったことさえある。
ご近所さんに目撃されれば一発アウトの不審者なので人に見られないように細心の注意を払いました。ご心配ありがとうございます。
そんな我が城に今年変化が訪れた。
新たな入居者がやってきたのだ。
それはいい、アパートに住む以上入居退去は当然のこと。
しかしこの新住人、ゴミ捨てマナーがまるでなってないのだ。
そもそも曜日が合ってない。
曜日というかもう、好きな日、好きな時間に好きなものを好きな袋にいれて捨てていく。
ラフ。
「曜日が違いますよ」の紙が貼られそのまま置き去りにされたゴミを引っ込めることなくそのまま回収の日がくるまで放置しているのである。
タフ。
私の買い物帰りや子どもと公園へ出掛ける時、結構な確率でゴミを捨てに行く新住人とすれ違う。
「おいおい、そこは君の家のゴミ箱ではないのだよ?」と肩を叩きたい。
しかし、人に見られても怯む様子のない強気な態度に実際の私は戸惑うばかりだ。
私がことあるごとにチラ見し、調査したところによると新住人は50代位の夫婦と高校生かそれくらいの女の子の三人家族だ。
家族仲は良さそうで休日になると揃ってシルバーの車に乗り込みどこかへお出かけしている姿を見かける。
ゴミ捨て担当なのかいつも犯行に及んでいるのは50代の男性(父親)だ。とはいえ何も言わない家族とて教唆とか共謀とか、ともかく何らかの罪名で同罪だ!
と思ってはいたが、心に留めているつもりだった。
その日までは…
その日、月曜は燃えるゴミの日なのだが、件の不届き者が大量の段ボールを捨てているのだ。いや、正確には犯行現場は目撃していないのだが、こんなことするのは絶対奴だよ!何より許せないのがご丁寧にネットの中に納め入れているとろだ。
うちのゴミ捨て場は結構狭くて燃えるゴミの日は「ギリギリで入ってるな」位の量が"カラスいけいけ"の中に押し込まれる。
なのに
そんな段ボールなんかを押し込んだ日には、入りきらない生ゴミが溢れ出るんじゃないの?
既に半分のスペースが段ボールだ。
カラスのパーティーが始まってしまう。
一説によると彼らカラスの知能は3歳児並とも言われているらしい。
我が家の3歳児をみるに大声で仲間を呼び、散らかし放題にするのは朝飯前の所業といえる。
これはいけない。
遂に、管理不動産屋にクレームのテルテルテレフォンか…!!
どうなる、どうする。
カラスのパーティーが始まったらもう、止められはしない。カラスは人の特徴を覚えて攻撃を仕掛けてくると「動物のお医者さん」を読んで学んだ者としては恨みを買うような行為は絶対に避けたい。
新住人はどう責任を取るつもりなのだ。
と、うちのベランダから見えるゴミステーションを折に触れてチラ見していた。
ゴミ収集車が段ボールを残して行ったタイミングで不動産屋に電話をしてやるんだ!
そう意気込んでいると、やってきた収集車は段ボールごとすんなり回収していった。
…あら、今日は段ボールも収集する日だったの?
ってことは、ただ単に「丁寧に段ボールが捨てられていた」ってだけなのか。
他の人の生ゴミもネットから溢れ出てはいなかったしマナーは守られてい、た…?
なんなら曜日が合っているし件の住人ではないのかもしれない。
実は私はいまだにこの地域の資源ゴミとかのイレギュラーなゴミの日を把握しきれていないのだ。ベランダからゴミステーションを目視して確認しているのである。
みんなが出していれば出すスタイルでやっている。
なるほど、わたしの一人相撲ってやつか。
ははぁ、こうやって冤罪は生まれるんだな、と身に染みた日であった。
と、少し反省したのに新住人は今日もまたフリースタイルでプラゴミをカラスいけいけの横にポツンと置いて行った。
今日はなんのゴミの日でもないよ。
やはり、油断ならない。
ところで、
フリースタイルゴミ出し住人と市原悦子ばりにゴミ出しを覗き見してくる住人とならどちらが嫌ですか?
私は断然悦子の方ですね。
これを書いている間中BGMでエンドレスに頭に流れていた曲を置いて終わりにします。
気に掛けてもらって、ありがとうございます。 たぶん、面白そうな本か美味しいお酒になります。