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日向夏、五段活用

「ひゅうがなつ」と読むこの柑橘が毎年4月になると実家の母から大量に送られてくる。
本当に大量なので、同じくこの量を受け取っている妹は同僚や友人に配っているというが私にはそのような知人はおらず、夫も果物はあまり食べないのでひとり消費してきた。

昨年くらいから娘(4歳)も戦力となり食べてはきたが、毎年GWは実家に帰省するので食べきれず残ったものは例年果実酒となっていた。

今年は帰省の予定がないので、全て生食のまま食べ終わりそうだな、とダンボールの中のものを見ていたら2個、痛み始めている個体を発見してしまった。

これでも大分減った日向夏

2個。
お酒に漬けるには少ないしどうしようかと思っていると、今までは意識の外にあったダンボールに同封されている公式からのお便りが目に入った。

今年初めて意識したキャラ「日向夏ちゃん」

マーマレード、いいじゃない。

□日向夏 2〜4個(300g)
□グラニュー糖 110g
□水      200cc

必要なものも全て揃っている。

早速、工程①の皮むき、千切りアク抜きなどを。
ただ傷んでいる2つだけを使いたかったので日向夏ちゃんが言っている「日向夏300g」については完全無視である。

大体の重さすら計らず千切り


そして工程②の果肉の薄切り。

柑橘の実を薄切りにするのは難しいと知りました


ところで、日向夏は皮と身の間にふわふわの綿があるのが特徴なのだが、この綿はどうすればいいのか日向夏ちゃん全く指示してくれない。
どうしよう。
正解が分からぬまま何となく省いた。

工程③は日向夏に透明感が出るまでグラニュー糖と煮る。
とあるが、グラニュー糖ではなくいつかの果実酒作りで残った氷砂糖があるのでそれを投入。 

果肉は私の目視によると5分ほど煮たならもう透明感が出てきたが「そんな短時間な訳がない」と本能のまま30分ほど煮続けた。
こうして何もかも日向夏ちゃんの言うことを無視したままのマーマレード作りは終了した。


普通、こういうものを作っているといい香りが部屋中に満ちるようなものなのに全くなんの香りもしてこないことに不安を抱いていたが、食べてみると正しく「甘くて苦いマーマレード」でホッとした。


さて、うちは最近引っ越しをしたところなので保存容器は当然行方不明である。
仕方ないので普通の容器に入れ、何となく3日以内位に食べきればいいかと娘4歳と2歳に味見をさせたら、4歳児は
「あしたのあさからパンにつける、つけるー!」と大変よろこび
2歳児は
「これはいらない」
とべー、っと吐き出した。

作っといてなんだが、私は朝のパンはバター派で夫も甘いものは付けない。

消費してくれるのは4歳児だけだ。

そうして3日間、4歳児の朝のパンにマーマレードを添えた後、勝手に設けたリミットの3日目を迎えたので「もう今日中に使い切ろう」と3時のおやつに子どもと作れそうなマーマレードパンケーキを焼いた。
材料を混ぜるところまで子ども達に手伝ってもらって焼き上げは私が。

粉類にバター、牛乳、卵、マーマレードをin


色を見ると
「2種類の味を作ったのね」
と思われるかもしれなし、娘も
「ふたつのあじにしたのー?!」と嬉しそうだが味は一種類である。
ぬか喜びである。
こういう適当なことになる度に

それでは主婦の夕食にはなれても決してグラビアに写る料理にはなってはくれない

吉本ばなな『キッチン』

の一文を思い出す。
私は夫にガサツと評されているので、結構な頻度でこの一文を思い出している。


しかし自分で作った、というのが良かったようで4歳児も2歳児も楽しそうに食べていた。
そして夜ごはんにはスペアリブをマーマレードで煮て出した。
やはり喜んで食べていた4歳児がはたと手を止め
「これマーマレードいれた?」
と聞くので
「入れたよ、全部」
というと急に号泣しながら
「あしたのパンのマーマレードがないー!」
と激怒し始めた。
また作って!とも言われたがもう日向夏はラスイチになっており、しかも生食で食べたいので無理なはなしだ。

子どもって喜び悲しみ怒りがほんと全力だなぁ、という感想とともに今年の日向夏がおわった。

夕食後、お風呂の準備などをする私のうしろで、いつの間にか機嫌を直したらしい娘たちが夫を利用しビデオ通話で夫実家に電話をかけおじいちゃんおばあちゃんと何やら楽しそうに話している声が聞こえてきた。
「お母さんが、手作りジャムで手作りおやつを作った」と報告すればいい、などと思いほくそ笑んでいたら2日後


贈答用バージョンの日向夏

夫実家から立派な日向夏が届いた。
驚いた。

どうやら先日のビデオ通話で
「ひゅうがなつおくってー」
とねだっていたらしい。
あいつらめ。

「これでマーマレードつくって」
と4歳児。
立派な日向夏なのでそんなことしたくない、生のまま食べたいと拒否したらまた全力で泣いていた。


こうして今年初めて私実家からの日向夏を終え、夫の実家から日向夏が追加投入された。

ありがたいことである。

日向夏。
生で食べて
マーマレードで食べて
パンケーキにして
スペアリブとともに
さんざん楽しんだあとこうしてnoteに記録して
活用法は多岐にわたる。
どうですか、みなさんも日向夏。

最後に
「マーマレードにまみれて」








気に掛けてもらって、ありがとうございます。 たぶん、面白そうな本か美味しいお酒になります。