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【不動産屋の雑談】引越は嵐のように、という話

町の不動産屋に勤めていた。
サザエさんの花沢不動産みたいな。

お客様を物件に案内したり契約書を作ったり、入居後の管理をしたり、家賃支払いが難しい時には相談してもらったり。
これは入居 退去 不動産にまつわるエトセトラの話である。


今そのお部屋が賃貸ならば、どこまでが備品でどこまでが自分達で用意したものだったか覚えているだろうか?

「退去立ち会い」というお荷物が全部出た後の物件の確認、という作業がある。
お部屋の汚損や破損の状況を入居者・不動産屋とで確認した後、鍵の引き渡しを行うのだ。

その時に、備品の有無も確認する。

よく持って行かれているのが照明器具である。
キッチンだけとか一ヶ所だけ元から付いていたりするからややこしいのである。

同じ様にエアコンもなくなる。
寝室分だけ元から付いていたり、とかのパターンで。

戸建だとテレビアンテナも意外と行ってしまう。


みなさんもちろん故意ではないので、言えば返ってくるのだかエアコンやテレビアンテナの取り付けは業者さんでないと出来ないので、別途費用を請求させてもらうことになってしまう。


ある時、新しく仲介に入ったアパートで退去があった。
立ち会いも問題なく終え、近くに住む家主さんにキレイでしたの報告と次回募集の件のお話を軽くしてその日は帰った。


翌日、退去後の物件を見に行ったという大家さんから電話がきた。
悪い話だろうな、と思いながら出ると

「みついさん、風呂蓋がなくなってます」

ふろふた。
初めてのパターンだ。

気にすらかけていなかった。

そもそも、入居時あったか なかったか すらも見ていなかったので指摘のしようもなかったのだが。

なんでも、そのアパートを建てたハウスメーカーではどのお部屋にも自社の風呂蓋を付けているらしく、これが結構な値段がするらしいので、なくなっては困るらしいのだ。

私の風呂蓋に関する知識も記憶もゼロなのでらしい、らしい、の話である。

風呂蓋なんて、次の入居者は自分達で用意するやろ なかったらなかったでいいやん、とは当然いかないので…

とりあえず、家主さんには謝って、お引っ越しされたお客様へテルテルテレフォンである。事情をご説明し、確認してもらうと

確かに、そのハウスメーカーの名が入った風呂蓋があるそうだ。

こちらも気づかず、すみませんと、謝り合いながら次の週に持ってきてくれることになった。
お引っ越し先は確か、旦那さんのご実家近く、車で3時間の隣の隣の県だ。

はるばる、風呂蓋を届けに

本当に申し訳ない。

とは、思うが大抵の場合、立ち会い時にはお荷物は既に新居に向かっていたりするので、時既に遅し、ということがほとんどである。


賃貸の備品にはくれぐれもご注意を、という話である。


とはいえ、とにかく引越当日は嵐のようなのでなかなかそうはいかないのも重々承知している。

気に掛けてもらって、ありがとうございます。 たぶん、面白そうな本か美味しいお酒になります。