叶わない恋

「叶わない恋をしている」
というつぶやきをSNSで見た。
文字を見ただけで胸が苦しくなった。

数年前、自分も叶わない恋をした。

一緒に遊んでも、複数の仲間と飲みに行っても、恋人ではないから次の約束をすることはなかった。
好きだという気持ちに気づかれたらめんどくさいと思われてしまうだろうから、自分の気持ちを隠そうと決めた。

しばらくして相手の仕事の都合で離れて会えなくなって、これを諦めるきっかけにしよう、自分の気持ちを消去しようと努力した。
月日が流れて、その努力が実って相手のことを思い出さなくなってきた頃、いくつかの偶然が重なって、また会ってしまった。
消去できたと思っていた気持ちは、実際は心の奥深くに厳重に隠しておいただけで、なくなったわけではなかったのだと自分で認めるしかなかった。

SNSでつぶやいてた人に伝えたい。
その叶わない恋は、つらいだけではないはずだ。
好きになれる人に出会えた幸せと、焦がれる想いを胸に抱える甘い苦悩は、人生の中でそう何度も経験できるものではないと思うから。

あの時、叶わない恋をした相手が今、俺の膝枕で寝ている。
幸せそうな寝顔を見ていると、「もう他の人のところに行かないでほしい、俺だけの彼氏になってほしい」と願ったあの頃の気持ちが込み上げてきて、今でも泣きそうになることがある。

恋人になったら恋が叶うわけじゃない。
恋をする気持ちは自分のものだから、叶ったかどうかは自分のとらえ方次第だ。

何年一緒にいても、優しくキスしてくれる彼に、お風呂で全身洗ってくれる彼に、背骨が軋むくらいきつく抱きしめてくれる彼に、俺はこの先もずっと叶わない恋をする。


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