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「フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔」

フォン・ノイマンといえば、コンピュータの父でありゲームの理論など数多くの発明をした天才として知られていますが、実は戦時中の原子爆弾の開発、マンハッタン計画にも深く関わっておりました。

以下、「フォン・ノイマンの哲学 人間のフリをした悪魔 (講談社現代新書)」より一部抜粋します。

当時の科学者にも良心の呵責から、都市への爆撃に使用すべきではないと主張した人々もおりました。一方でチャーチルが「ハイドパーク協定」に基づき原爆投下を迫ったことはあまり知られていないと思います。

あの時、広島、長崎ではなく本土近海の無人の島への原爆投下でも日本の降伏は時間の問題であったと思います。

狂気の時代が天才をして悪魔にならしめたのか、人間の奥底に潜む愚かしさの現れだったのか、いずれにせよ当時の事実を再度学ぶことが大切であると思います。

(以下抜粋)

第5章 第二次大戦と原子爆弾 より

要するに、ノイマンの思想の根底にあるのは、科学で可能なことは徹底的に突き詰めるべきだという「科学優先主義」、目的のためならどんな非人道的兵器でも許されるという「非人道主義」、そして、この世界には普遍的な責任や道徳など存在しないという一種の「虚無主義」である。  ノイマンは、表面的には柔和で人当たりのよい天才科学者でありながら、内面の彼を貫いているのは「人間のフリをした悪魔」そのものの哲学といえる。

五月一〇日にロスアラモスで開かれた「標的委員会」では、ノイマンは、科学者を代表して原爆の爆発高度を選定するという重要な立場で出席した。  空軍が目標リストとして「皇居、横浜、新潟、京都、広島、小倉」を提案した。ここでノイマンは、皇居への投下に強く反対し、もし空軍があくまで皇居への投下を主張する場合は「我々に差し戻せ」と書いたメモが残されている。

ノイマンが強く主張したのは、京都への原爆投下だった。ノイマンは、日本人の戦争意欲を完全に喪失させることを最優先の目標として、「歴史的文化的価値が高いからこそ京都へ投下すべきだ」と主張した。

(1940/9/18) 米英の首脳は「ハイドパーク協定」と呼ばれる密約を交わした。  この密約の内容が情報公開されたのは一九七二年のことだが、実はこの密約の時点で、ドイツではなく日本に原爆を投下することが決まっていたのである。戦後にアメリカがソ連を超える大国となるために、それを強く勧めたのは、チャーチルだった!

平和主義に目覚めたシラードは、一九四五年六月一一日、シカゴ大学のノーベル賞受賞者ジェームズ・フランクを担ぎ出し、自分を含めた科学者七名の連名による「フランクレポート」を大統領に提出した。原爆を無警告で都市に投下するのは非人道的なので、日本人を呼んで砂漠か無人島で原爆の威力を見せつけ、降伏を促せばよいという提案だ。

しかし、チャーチルは「ハイドパーク協定」の早期実行を要求し、グローヴスは広島が「軍事都市」だという誇大報告書まで作成して、原爆投下を迫った。

もし日本が降伏しなければ、八月一九日に「東京ジョー」と名付けられたプルトニウム型原子爆弾を東京に投下する予定があった。

(引用ここまで)


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