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雨音、火照る、爪を立てる

・・・気になるあなた、隣の芝生・・・


かっこいいなーって思って
話してみたら更に同じ趣味まであった
運命かも、なんて思ったけど
もう既にあなたには愛する人がいて、
幸せぶりをSNSに載っけていた

そんな子より私の方が!
…なんて思ったけど
容姿も性格も、何もかも勝てる気がしなかった
なんて僻んでる私が惨めで仕方なかった。

叶わない恋に落ちて数ヶ月、
その彼女のSNSから二人の写真が消えていた。


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・・・凹むあなた、浮つくわたし・・・


聞けば彼女に振られたらしい。

当時は彼に彼女もいたこともあって、
頻繁に連絡を取ったりしてなかったものの
口上では友達だったので
何食わぬ感じで聞いたら、
相当面食らっていたらしく
聞いてない事まで全部(まじで惚気半分文句半分)言ってきた。

そんな話を聞いててモヤっとしたので
あぁ、これが嫉妬かなぁなんて
不毛な事を考えながら、グラスのお酒を飲み干した。

酔いのせいか、
別れた彼を目の前に
皮肉にも私は浮かれている。
長いまつ毛、綺麗な輪郭etc…
やっぱり彼はかっこよくて
愚痴を聞いていてもこんな人を振るなんて
あの彼女はなんて勿体無いんだろうか

私も大分酔いが回ってきて
外に出たらうっすら雨が降っていた
私はこの雨の匂いが好きではなかった。
なんだったかペトリコールとか言ったっけ?
まぁ、仕方なしに大きめのビニール傘を
コンビニで買って二人でさす。

彼も割と酔っ払っていたらしく、
元カノのことなんて忘れたかのように
はしゃぐ彼が、愛おしくてたまらなかった。


「 私だったら… 」

思ったことが口に出てしまう
止まらない好きが、劣情が漏れ出す。

雨の匂い、彼の匂い。
早る鼓動、傘を打つ雨音。
慰めの口付け。
踏み込んだ友達以上のボーダー

そこからは他愛無い会話を挟んで
帰る駅とは逆方向、同じコンビニにまた入り
店員に冷たい目をされるがそんなことはどうでもいい。

お酒とおつまみを買い足して
約束したかのようにネオンを抜けて
ラブホテルに足を運んだ。


・・・恋人未満・・・

匂い、温度、絡め始める指
雨で少し冷えた体が熱を帯びる。
アルコール混じりのキスに興奮は冷めず
頭と体が彼で満たされていく

触れて、撫でて、抱き締めて。

一瞬彼の元恋人の存在がよぎる。

きっと私はその人の代わりなのかもしれない…

彼の汗が垂れてきて、
そんな嘆きは一瞬で快楽にかき消された。


私の恋は報われているのだろうか
これは正しい恋なのだろうか
好きな人とキスをして、
好きな人に抱いてもらって、
口約束はしないまま事が終わる。

辞めたと言っていた煙草をくゆらせながら
後ろめたそうな背中を見て、何故か涙が出た



彼の手を握っても握り返してはくれず
もう一度誘ったら簡単にまた始まった。

入ったときは気づかなかったけど
彼に抱かれながら見える天井には
安っぽいプラネタリウムみたいなものが光っていた。
これぐらいが充分
と言われているような気がして腹が立った。

彼が果てる、私は八つ当たりのように
彼の背中に爪を立てる。




・・・雨が止む迄・・・


さっきまで振られて凹んでた人が
私で気持ち良くなって果てて、
今じゃ寝息を立てている。

少しでも忘れられたなら良かった。
そのまま元恋人ことなんて忘れて
私のものになれば良いのに。
という言葉は胸にしまって
彼にキスをして私は眠った。


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今はこの関係でも良い。
いつかあなたの気持ちがこちらを向くまで、
あなたの寂しさは私が埋めてあげるから。


ペトリコール/Lym

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