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短編小説

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短編小説「帰性物語」

「帰省は楽しいけど、帰るまでが面倒なんだよなぁ」 「いやいや、家を出た時点で''帰性物語''は始まっているから。良くも悪くもね」 「どういうことだ?詳しく聞かせてくれ」 ・ ・ ・ 東和ハイツ――僕の家からバス停までは近いようで意外と遠い。そう、意外と。そのせいでバス停に行くときはいつも、時間配分を誤って途中で走ることになる。 今日もそうだった。真夏とは言えど、太陽に十分照らされた後の午後二時は一日で最も気温が上がる時間帯。僕は汗だくになりながらバス停に辿り着いた。しかし