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呪いのように忘れられないもの

呪いのように忘れられないもの。離れたと思ったもやっぱり戻ってきてしまうような、そんな物を私は持ってる。
先日、先輩のでてるミュージカルを観に行った。舞台に立つという夢を追い求める者達の物語だった。
ミュージカル、私にとってそれは恋のようで。音楽を聴けば今でも心は鼓動を速めるし、足はステップを踏む。そして忘れていた想いがそっと船に乗って戻ってきた。ゆらりと揺れて。私は小学校入学前から中学三年生まであるミュージカル劇団に所属していた。お世話になったお姉さん達、泣きながら行った自主練に、初めて射止めた主役、それから大勢の前で怒鳴られた思い出、学校を早退した本番。週に一度のレッスンで悔しさも挫折もやるせなさも全て経験した。やがてそれは私のアイデンティティを作り上げ、私を作り上げる。そして、私は辛いことがあろうとミュージカルが大好きだった。
しかし、中学三年生の冬、私は9年間お世話になった劇団にさよならを言った。確かにこのままのめり込んで行くこともできたけれど、私はそういうことはしなかった。周りは言った、「9年間も続けたのにもったいない」と。しかし、戻ってくる家という表現があれば、どうしても断ち切れないしがらみとも言える。または、アディクトとでも表そうか。つまり、辞めるタイミングを間違えば、それは私を束縛してしまうと思うのである。
続けることは時に怖い。でも辞めるのはもっと怖い。辞めると何かが終わってしまう、そして意気地なしだと思われるような、そんな気がして。しかし、辞める、という選択肢は諦めることでも、絶つことでもない。良い距離を保つことなのである。
寝れない夜に飲むアルコールのように、私はミュージカルを自分をリラックスさせ、そしていい夢へと導いてくれるものとして持ち続けていきたいのである。不安も嫌なことも忘れさせてくれるものとして。
アルコールをソムリエとして飲むか、飲んだくれて依存症になるか、時に楽しい気持ちとともに味わうかは、全て私次第なのである。

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