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【詩】踏みしめるそこに


  「踏みしめるそこに」

  裸足がよいか

  靴下でもよいか

  シューズやヒールでもかまわない

  ただ立ち止まってみた方が

  よいかもしれない

  何を履くか以上に

  どう踏むかによって

  聴こえてくる声があった

  大地は子宮だ


  そのことをまだ知らなかった頃

  シロツメクサとムラサキツメクサの

  色の違いばかりが気になって

  公園の空虚を眺めていた

  きれいに刈り払われた草原の上に

  バドミントンをする
    若夫婦と幼な子の影

  無意識にあそぶ靴たちは

  大地を踏み荒らすどころか

  潜る根とともに躍動していた


  わたしは野原の縁で

  息絶え絶えの野花を手折り

  逃げるかのように立ち去った

  病床に臥す〈かの人〉の
    目の届くところに

  小さな瓶と水と共に

  この色褪せた花を添える

  質のあまり良くないベッドは

  無様にたわんでいた

  おのずと手が伸びる

  くぼみをなぞると

  あるはずのない躍動がそこに

  大地はやはり子宮だったのだ

  今もなお送り込まれる血液に

  瓶の水面まで微かにふるえた



#詩 #ポエム

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