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ひととき 【詩】

優男のグレーのマニキュアから
流れ出ていく現代音楽
英著論文を斜め読みしながら
直観で生きることを譲らず
不協和音を不測のリズムで
奏でる人のよく調和したフォルム

アイボリーのブラインドのように
遮るふりで誘い込みたい
憚らずに赦し合いたい

そこにない水槽の光と藻が揺れた
泡の群れは水面を超え
シーリングファンをすり抜けて
銀河の礫になるまでの道が用意されている
一瞬の気の緩みが即座に設ける天井を
消すためにきっと歌はあるんだ

酷薄そうな唇が 何か言いたげに歪む
彼は 愛はここに留まらず
飛散していくものと知っている
ナルシシズムに沈ませはしまい と
晩夏のサンダルの隙間に覗く紫
一目惚れの軽薄さこそ
世を渡るための初速になるのさ


#詩

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