0339_20240501・【創作BLと言い張る】兄はペッパープリンがお好き【エロシーンは無い】
父親は「プリンに醤油をかけるとウニの味」といい加減な嘘をついていたけれど、春海もそういう嘘を真に受けたのだろうかと秋緒は思う。
冷蔵庫から満を持してマグカップを二つ取り出した春海が続けてペッパーミルをテーブルに置くのを見て、秋緒は二人分のお茶をコップに注ぎながらあからさまにげんなりした顔をする。
「まーたやんの? それ」
「いやウマいんだって、ホントホント」
プリンに胡椒をかけるとうまい。そう力説するのをはじめて聞いたのは何年前だったか。
一緒にお子様ランチを食べていた幼少時にそんな悪癖は無かったはずだ。
春海が自炊にこだわりだしてネットのレシピをあれこれと食卓に並べだした頃にお目見えしたマグカッププリンも最初はまっとうに甘いだけだった記憶も間違いない。
秋緒はプリンにだばだばとメープルシロップをかけながら、テーブルの向かいでゴリゴリとペッパーミルを挽く春海を見る。
「「いただきまーす」」
マグカップにスプーンを突っ込んでかきこむ自家製プリンはやはりうまい。
「ホントにウマいのー? それ」
「ウマいって、お前もやればいいじゃん」
「えーやだ」
「はいはい」
長年一緒に暮らしても、味覚が合わないことは多々あり。春海は無理やり食べさせることはしないが、秋緒は衝動的に作る珍料理の後始末にしばしば相手を巻き込む。
(無理やりスプーンを口に突っ込むくらいしても良くねーか?)
秋緒は今年の2月に異様に香ばしい(焦げ臭いともいう)皿いっぱいのチョコケーキを春海に押し付けて完食させたことを思い出す。
「ごちそうさま~」
「おう、お粗末様でした。あと流しに置いといてくれ」
「今日はオレがやろうか?」
「いいって、ほら原稿の続きがあるんだろ。そっちやっとけ」
「うぇーい」
犬のルーミちゃんは、森の配達屋さんです。
今日はオイカ様に手作りのプリンをお届けします。
秋緒がネットで不定期に連載しているケモノ漫画「配達屋のルーミちゃん♂」は、いわゆるマニア層に好評を博しているタイプの欲望系漫画である。
なお春海含めリアル知り合いには「ほのぼの動物漫画」と言い張り、ダミー漫画以外は見せていない。
「プリンに胡椒をかけるとおいしいんだよー」
そう言ってルーミちゃんはコショウのかかったプリンをひとすくい、大好きなオイカ様の口にスプーンを挿しこみました。
オイカ様は
「うまいのか……? わからん」
秋緒は、味見させてと迫らなかった自分をかなり後悔した。
「こっから濃厚なアレでアレしてアレになだれこむ展開にするには味の感想があった方が……。やっぱ普通のプリンにすっか……? いや解釈違いだろ!」
ルーミちゃんのモデルは、春海である。
(了)
AKIO=OIKA
おわかりいただけただろうか。
春海は「兄」ですが、秋緒との続柄は二親等ではありません(無駄に設定をもったいぶるマン)
ちなみに「プリンに胡椒(or塩胡椒)をかける」はあります。ググってくれ。
筆者は車輪の再発明しました(←業スーのパックプリンが甘すぎて刺激を欲した結果)
あっこれ、採用したマグカッププリンのレシピです。