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ビット・デプスと32bit floatの話

音声信号がデジタル上でどう記録されるのか

DAWや多くのコンバーターで使用するパルス符号変調(PCM)方式について。アナログ音声を録音するとき、入力された音声信号はA/Dコンバーター(Analog to Digital Converter)により数字の列に変換されますが、これは音声信号の連続的な電圧値を毎秒何万回と等間隔でサンプリング(標本化)することによりデジタル変換され、連続的ではない離散的なデータとなります。

アナログデータとデジタルデータ

ビット・デプスとサンプル・レート

PCM録音の概念図

ビット・デプス(Bit Depth)
グラフのタテ軸の解像度で、電圧を測る精度を表します。ビット・デプスが大きいほど方眼紙のタテの目が細かくなり、1ビット増えるたびに解像度、すなわちマス目の数は2倍になります。

サンプル・レート(Sample Rate)
グラフのヨコ軸の解像度で、1秒毎に信号電圧を測定する回数を表します。

例 : 16Bit / 44.1kHz = 2の16乗での電圧値測定を、毎秒44,100回行う。

信号レベルの解像度

デジタル・オーディオで使用される16/24ビットは、符号付整数と呼ばれプラスまたはマイナスを表す符合を持つ整数値です。
1ビット増えるごとに解像度は2倍になるので、16→24ビットはおおよそ256倍になります。ただし、整数なので少数は表現できません。また、方眼紙の目が細かくなるだけで測定できるアナログ信号レベルの上限値が増えるわけではありません。

32bit floatの表現範囲

16/24ビットが符号付整数であったのに対し、32ビットデータは浮動小数点数、または32bit floatといいます。16bit、24bitの違いはグラフのタテの目の解像度だけでそれぞれが表現できる最小/最大値は同じ信号電圧を表します。これを32bit floatに変換すると、コンバーターが入出力できる電圧値の上限、下限がそれぞれ+1.0、-1.0に対応します。

例えば、+1.0より0.1だけレベルオーバーしてしまったとしても+1.1という値として扱えば良いわけで、トラックやAUXバスの出力が0dBFS(16/24bitで表現できる上限)を超えてしまっても、マスターバスを出る(D/Aコンバーターに送られる)までに、再び-1.0~+1.0の範囲に戻してやれば音がクリップすることはありません。これは、32bit floatの方がデータ量が多いからというわけではなく、数値を表す体系がまったく異なるためです。

製作時のビット・デプス管理

DAWのプロジェクトを管理する際、品質を損なうこと無く、また必要以上のストレージ消費を避けるためには、以下の場合が想定されます。

16/24bit が使用される場面
・A/Dコンバーターから入力される信号
・D/Aコンバーターに出力される信号

32bit float が使用される場面
・DAWの内部バス
・プラグインの出入り口

A/Dコンバーターの設定より高いビット・デプスで録音するメリットが生じる場面はインサートエフェクトを使用したかけ録りを行う場合です。また、フリーズトラックを書き出す際も32bit floatで書き出すと、フリーズトラックによる劣化は起こりません。

ミックスした曲を書き出してマスタリングする場合

32bit floatのバスを持つDAWを使用することが予めわかってる場合、32bit floatで書き出すのが最良です。ただし、ミキシングの最終段階でアナログ機材など通したときは、マイク入力同様A/Dコンバーターに設定された以外のビット・デプスで書き出す意味はありません。


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