『Pachinko』 Min Jin Lee

一ヶ月ほど前に読んだ、在日コリアンを題材にした本。作者は韓国系アメリカ人のMin Jin Lee氏で、本人は東京で4年間暮らしたことがあって、その間たくさんの在日コリアンの方にインタービュを行ったという。

オバマ前大統領が2019年末に公開した(恒例の)おすすめ書籍リストにあったことをきっかけに、そして元々在日コリアンが関心分野のひとつなので、この本を手に取った。(正確には緊急事態宣言真っ最中でなかなか紙の本を買えずKindleで読んだが...)

『Pachinko』は1883年から1989年まで100年近くの家族4世代の物語、そして歴史小説の側面もある。オープニングの舞台は日本統治下の影島(ヨンド)という日本の対馬に近い島で(晴れた日に南端から対馬が見えるらしい)、子供世代は大阪の鶴橋に移住し、孫世代はそれぞれ横浜と長野、ひ孫世代はアメリカへの留学経験もあって多様な地域が登場する。

物語がドラマチックゆえにネタバレせずに語るのは難しいなと、書きながら思ったので、非常に個人的な感想だけ... 大学時代に卒論のテーマを在日コリアンにしたので、学術書は読んだことあるし、在日コリアンを題材にした映画(『GO』、『かぞくのくに』)も観たことあるが、前者は法制度関連のものが多く、後者はどちらも『Pachinko』の家族でいうと孫世代以降の話が主だったので、生身の登場人物の主観から在日コリアンの経験を読むことも、特に19世紀末〜20世紀頭の話を読むことも自分にとって新鮮だった。

そして主人公だけではなく、家族4世代の構成員とそれぞれの人生に重要な人物たち全員の物語に深さがあり、感情の描写も共感・納得する部分が多くて、最初から最後まで面白かった(かなりの切なさも混じるが)。

Min Jin Leeさんの語り方が自分にとって読みやすくて、修飾も捻りもしすぎないストレートだけど深さがある書き方が好き。もう一冊の小説である『Free Food for Millionaires』では韓国系アメリカンの話で、今自分のなかのプチ中国小説ブームが落ち着いたらぜひ読みたいー。

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