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『家庭内感染の70%は子どもから』米国の研究

子育て経験がある方にとっては『そらそうよ!』って感じかもしれませんが、新型コロナに関するタイトルのような調査結果の記事です。

まあ、考えてみるとそんな感じはしますよね。
子どもが悪いとかでは全然ないんですけど。

今回は、論文のレビュー記事を翻訳抜粋し所感を記したいと思います。


◆記事紹介

記事から一部翻訳引用します。
長いのでお時間の無い方は飛ばしてください。
リンクは以下です。

CIDRAP
米国の家庭用COVID拡散の70%以上が子どもから始まったとする研究結果が発表されました。
Mary Van Beusekom, MS
June 3, 2023

昨日JAMA Network Openに掲載された研究によると、米国の約85万世帯のCOVID-19の感染経路の70.4%が子どもから始まっていることが示唆されました。

若い子ほどウイルスを撒き散らす可能性が高い

発熱の基準を満たしたのは15.8%で、発熱エピソードは779,092件に上りました。発熱エピソードの数は、新たなCOVID-19の症例を予測するものであり、研究者は、発熱を感染の代理として用いることに妥当性があるとしています。これらの症例のうち、15.4%が家庭内感染とされ、その割合は2021年3月から7月の10.1%から、オミクロンBA.1/BA.2変種波では17.5%に上昇しました。

大人と子どもの両方が参加する166,170世帯(複数参加世帯の51.9%)のうち、参加者は516,159人で、その51.4%が子どもでした。これらの世帯では、38,787件の感染が発生し、その40.8%が子どもから子ども、29.6%が子どもから大人、20.3%が大人から子ども、9.3%が大人であった。指標となる症例と二次症例の間の連続間隔の中央値は2日であった。

全世帯の感染経路のうち、70.4%が小児から始まり、その割合は36.9%から87.5%の間で週ごとに変動していた。小児感染は2020年9月27日の週に68.4%と最高値を記録し、2020年12月27日の週には41.7%と最低値に落ちました(0.61倍の頻度低下)。次に高いのは2021年5月23日の週の82.0%で、6月27日(81.4%)まで安定して推移し、8月8日には62.5%まで低下した(0.77倍低下)。

その後、子どもから始まる世帯発信の割合は、9月19日には78.4%まで上昇し、11月14日(80.3%)まで推移し、2022年1月2日の週には54.5%まで低下した(0.68倍減)。3月6日には83.8%に上昇し、7月24日の週には62.8%に低下(0.75倍減)し、10月9日の週には84.6%に上昇しました。
8歳以下の子供が感染源となる可能性は、9歳から17歳の子供よりも高かった(7.6%対5.8%)。パンデミックのほとんどの期間において、子どもからの感染割合は、地域のCOVID-19の新規感染者と負の相関がありました。

対面式の学校が感染に寄与
"大人と子どものいる家庭での感染の70%以上が小児科のインデックスケースからのものであったが、この割合は週ごとに変動した。"と研究著者は書いています。"2020年秋に米国の学校が再開されると、子どもは学校にいるときに推察される家庭内伝播に多く寄与し、夏休みや冬休みには少なくなり、このパターンは2年連続で一貫していました。"

研究者らは、パンデミックのほとんどの期間において、小児のCOVID-19感染が新たな地域感染者と負の相関を示したという知見は、以前の研究の結果と一致すると述べています。

2020年秋に米国の学校が再開されると、子どもたちは学校にいるときに推察される家庭内感染に多く寄与し、夏休みや冬休みには少なくなりました。
「COVID-19の発症率が上昇すると、地域の大人の感染リスクが高くなるため、大人が家庭内感染の指標となる可能性が高まり、今回観察された負の相関を説明できるかもしれません」と、研究グループは書いています。"また、COVID-19の発生率が低い場合、非薬物的介入の全体的な使用が減少し、小児でより一般的である可能性のある非SARS-CoV-2病原体の発生率が増加する可能性があります"。

著者らは、SARS-CoV-2の拡散には子供が重要な役割を担っており、対面式の学校でも実質的な拡散につながったと結論付けています。"今後の研究では、追加のデータ収集と検査室での確認のために、現場訪問や他の契約追跡アウトリーチで、参加型ネットワークから推測される感染を検証することができる "と彼らは書いています。"デジタル技術を活用したシステムは、公平なアクセスを確保するためにあらゆる努力をしなければならない。"

More than 70% of US household COVID spread started with a child, study suggests | CIDRAP
[2023.06.05 引用]
www.DeepL.com/Translator(無料版)で翻訳しました。
https://www.cidrap.umn.edu/covid-19/more-70-us-household-covid-spread-started-child-study-suggests

◆まとめと所感

米国での2019年10月から2022年10月までの発熱データによる研究です。

記事タイトル中の『70%以上が子どもから』というのは目を惹きますが、内訳を見るとそこまでのものでも無さそうです。私が誤読していなければ以下のような感じ。

<全体内訳>
・A(家庭内感染):15.4%
・B(市中感染(経路不明)):その他

<家庭内感染内訳>
・A-1(子どもからの感染):70.4%
・A-2(大人からの感染):その他

<子どもからの感染内訳>
・A-1-1(子ども同士):40.8%
・A-1-2(子どもから大人):29.6%

◇◇◇

家庭内感染(全体の15.4%)の内の7割程度が子どもからの感染、ということ。

個人的には『家庭内感染の割合が思ったほど高くない』という印象で、その7割だったらそこまで注目するほどのものかね。と思わなくもないです。
(その中でも4割程度が『子ども同士』ですし。)

とはいえ、注目されているのが『感染増加』と『子どもからの感染』の負の相関。これをどう見るべきか。


◆負の相関

『感染増加』と『子どもからの感染』については、以下の表にまとめられていました。
青い線が感染者数の増減。色付きの波が子どもからの感染。

Smart Thermometer–Based Participatory Surveillance to Discern the Role of Children in Household Viral Transmission During the COVID-19 Pandemic | Infectious Diseases | JAMA Network Open | JAMA Network
[2023.06.07
 引用]
https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2805468

◇◇◇

たしかに、感染のピークを見ると『子どもからの感染』の割合は落ちています。

著者は『SARS-CoV-2の拡散には子供が重要な役割を担っており、対面式の学校でも実質的な拡散につながった』としていますが、どうなんでしょうね。

もうちょっと家庭内感染の割合が高ければそんな気にもなりますが、全体からすれば圧倒的に大人同士で感染を拡げているような気がしないでもないです。


◆日本の場合

『日本の場合は子どもからの影響ってどうなってんのかね』と思い、同じようなデータを軽く探してみましたが見つからず。(もう、なんていうか、厚労省関連のデータを時間かけて探す気力が無いです。)

で、そのようなデータが無くとも、年代別の抗N抗体保有率を見れば影響がわかると思い、軽く探したら2023年2月のデータがありました。以下です。

新型コロナウイルス(2019-nCoV)関連情報ページ
[20230612 引用]
https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov.html

◇◇◇

上記を見ると、子ども(15歳以下)のデータが無い!

なんていうか、こういうのって感染対策の力の入れどころとか、作戦を考えるうえで結構重要だと思うんですけどね。なぜ無いのか。

まあ、傾向としてやはり若いほど感染してるっぽいんで、全体から見れば子どもの影響というのは、やはり大きいのでしょう。


◆おわりに

普通に考えたら感染率の最も高い年代(または特定の職業等)への対策を強めることで、全体の感染率を下げることが出来るだろうと思えます。絶対数にもよりますが。

そのような意味で、やはり『子どもを感染させない』というのが最も重要な対策になるのではなかろうか。心情的にも。

◇◇◇

前回の記事で『中学校の教室内でのマスクと空気清浄機の効果』について取り上げました。

それによると空気清浄機はマスクよりも効果が劣りますが、当然ながら使用する機器の性能により結果は大きく異なるはずです。

ノーマスクで最善に近い感染対策を行うために、学校等ではそのような機器の導入を検討して欲しいところですね。

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