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クマに食べられた親子

親子が山で遭難したとの連絡が入った

「遭難したのは父親52歳、母親49歳、娘10歳の3人親子。山に登ったとされている日から一ヶ月以上連絡が取れないということで、近所の人から連絡が入った」

「一ヶ月?それだけ経ってたら、食糧も尽きてるだろうし、まあ残念ですけどもう死んじゃってますね」

「そうだな。まあ、それでも探さないわけにはいかないからな」

「あー、今日の夜は彼女と美味しいレストラン行く予定だったのに。また仕事?って怒られちゃいますよー」

茶髪にピアスというあんまりレスキュー隊に見えない後輩がため息をつきながら、靴紐を結ぶ。

「レスキュー隊とはそういう仕事だ。俺たちは救助を求められたら、いつでも助けに行く。俺たちの予定にあちらは合わせてくれないからな」
「もー俺この仕事やめようかなー。給料がいいからこの仕事入ったけど、全然自分の時間が作れないっすよー」

俺は後輩の愚痴を聞き流しながら、山に向かうヘリコプターの手配を始めた。

そして、俺たちの予想は外れることになる。

ヘリコプターで探すところ1時間、下に人らしきものを発見した。

下に下がり、ヘリコプターからハシゴをたらし下に降りると、俺は息を飲んだ。

目の前にはやせ細った少女と腹のあたりが大きく抉られた両親らしき人物が倒れていた。両親の腹からは内臓が飛び出ていて、死んでいるのが一目で分かった。

クマに食べられたのか。ここら辺はクマが多い。先日もこの山で老人夫婦がクマに襲われたと連絡が入っていた。

しかし、倒れているやせ細った少女は見たところ大きな怪我はなさそうで、驚くことにまだ微かに息があった。

「おい!まだ女の子は生きてるぞ!急いで引き上げて病院に連れて行くぞ!」
俺は上を向いてヘリコプターに乗っている後輩に向かって声を上げた。
「マジっすか!了解です」

俺は少女を抱き抱えると急いで梯子を登った。

結果、少女は一命を取り留めたと連絡があった。退院は一ヶ月後になるそうだが、普通の日常生活に戻れるそうだ。

「しかし、泣けるっすよね。きっと両親は身を挺して我が子を守ったんですよ」
後輩はしみじみと涙を拭いながらそういった。見た目はチャラいが妙に情に熱いところがあるから、結構俺はこいつのことを気に入っている。

「そうだな」
「でも、すごいっすよね。食糧はもう残ってなかったはずなのに、一ヶ月も生き延びれたなんて。普通だったら死んじゃってるはずなんですけどね」
俺は後輩の言葉を聞きながら、少女を発見した時のことを思い出していた。

あの時、少女はなぜか口の周りが血で汚れていたのだ。


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