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私はシステムエンジニアという仕事を気に入ってる

私の職業はシステムエンジニアだ。業界はいわゆるSIerである。

X(旧Twitter)では時たまdisられる業界であり職種だが、私はこの仕事が気に入っている。新卒で入社した会社に勤め続けて、今や中堅と呼ばれる層に片足突っ込んでいるところで、大変なことも面倒なことも多いが、辞めたいと思ったことはあまりない。大学も情報系のため同じくSEになった友だちが数人いて、中には違う業界に転職した人もいる。彼らには「tomoはこの中で一番SEに向いてる」と言われる。職場の先輩にも「tomoにはこの仕事が天職」と言われた。

天職と言うと違和感があるけど、少なくとも向いてないことはない、と自分でも思う。他人から見てもそう思われるのには、何か特徴があるんだろう。

最近、仕事とは関係なしに、自己分析というか、自分はどういう人間なのかを内省することがある。すると内省していくだけ「確かに私にとってSEはいい仕事だなぁ」と思うようになった。

就職転職サイトで見かけるような「SEに向いている人」的なキーワードではあまり見ない理由だと思うため、ちょっとここに書き出してみたい。

飽き性だから。仕事の幅広さが飽き性にはちょうどいい

SEの仕事は幅広い。要件定義、設計、製造、試験、リリースの一連の開発プロセスはもちろん、さらに上流のシステム企画・提案を営業支援で行うこともある。リリース後も運用・保守があり、さらに先にはシステム更改でまた新しい案件が立ち上がる。
こういった業務を横軸とすると、縦軸はシステムのレイヤだ。大きくはアプリケーションとインフラに分かれる。
加えて、どんな顧客を相手にするかによって携わる業界も多種多様である。業界が変われば必要な知識も変わる。金融分野であれば金融商品や金融の法関連に精通していなければ設計はできないし、医療分野では医療情報やレセプトなどの知識が不可欠だ。

そして多くのプロジェクトは、数ヶ月から長くても3年ほどでいったんリリースの区切りを迎える。区切りを迎えて追加開発がない場合、保守要員を残して開発要員は他のプロジェクトにアサインされる。(もちろん組織によるだろうけど)

私はというと、諸所の事情もありこれまで、超上流から運用保守まで、そしてアプリケーションからインフラまで、いろんな業種のプロジェクトでいろんな立場を経験させてもらった。なぜかAndroidアプリを開発していたこともある。2年以上同じプロジェクトにいたこともあるが、数ヶ月のプロジェクトを転々とした時期もあった。

だけどそうやって多くの経験ができた一方で、専門の分野が作れていないという感覚はあった。「私の専門はこれです」と言えるものがないのだ。Xで度々揶揄されるようなまさに「何でも屋さん」。それをコンプレックスに思って、将来どうなるんだろうと不安に思う時期もあった。でも今は、それでもいいかと思っている。私はおそらく、一つのことを極めるということにあまり向いてない。

なぜなら飽き性だから。

とあるプロジェクトに配属されたとする。そこは、これまでの顧客の業界とは違う業界で、新しい業務知識が必要になる。立場や扱うシステムレイヤも変わって新しいスキルが要求される。そういう状況になったら、早くその環境に慣れるためにぐっと集中して仕事に取り組む。その瞬間が楽しい。

そしてしばらく経って新鮮さがなくなってくると、「こんな感じか」とわかった気になって、だんだん興味が薄れてしまう。(自慢でも何でもなく、本当は全然わかってなくても、ただそう思ってしまう。飽き性あるあるかもしれない)興味が薄れると仕事がマンネリになる。マンネリになると楽しくない。

でもそういう時に他のプロジェクトに移ると、またそっちに興味が湧いて楽しく仕事ができる。そしてまた興味が薄れた頃に他のプロジェクトに移る。このループが、私にはいいメンタルで仕事ができる塩梅らしいというのが最近わかってきた。

長く一つのプロジェクトに従事したり、専門的に技術を極めるのはもちろん素晴らしい。そういうエンジニアは絶対に必要だ。でも私のような、ふらふら目移りして軸が定まらない人間には、SEが持つ仕事の振り幅がちょうどいいみたいなのだ。

何かを体系的に学ぶこと、知識と知識が繋がることを楽しいと思う

新しい環境でぐっと仕事に集中する時が私は楽しいと書いたが、それをもう少し深掘りするとこういうことになる。

例えばシステムのアーキテクチャを検討・決定する立場になったとする。上位レベルの人に教育してもらえる状況ならいいが、なかなかそんな都合のいい体制にはなっていない。何となく可用性やセキュリティや拡張性なんかを意識しながら検討するも、この考え方で正しいのかわからない。自分には見えていない部分がたくさんたくさんあるような気がする。
そういう時に、アーキテクチャについて解説した本を読む。そうすると、「こういう考え方があるのか」「あの時こうすればよかったのか」「あのすご腕エンジニアが言っていたのはこういうことだったのか」と発見が多分にある。

そのとき、経験と知識がリンクして、自分の中で世界の一部分が新しく構築されたようで、どうしようもなく嬉しくなるのです。

どうやら、私は本質的に「わからなかったことがわかるようになること」が楽しいらしい。経験と知識、または知識と知識がつながる瞬間(Connecting the dotsという言葉を最近覚えた)を求めて、難しい問題にぶち当たっては、本を読み一人で感動してニヤニヤする。

そういった、「わからないことに対する前向きさ」みたいな気質が自分にあることを自覚してからは、意識してそういう行動を取るようになった。すると前より仕事が少し楽しくなった。IT業界なんてしょっちゅう新しい概念や知識が生まれる場所で、先述の通りSEは何でも屋さん的な職種だから、この性質はきっと強みだろう。

とはいえ飽き性でもあるから、ひとしきり感動したらまた次の「わからない」を求めてふらふらするのだ。


システムエンジニアは、飽き性というネガティブなものも含めて、自分の性質がプラスに活かせる仕事らしい。

でも「好きな仕事」とは言ってやらない。それなりに大変さもあるしうんざりすることも多いから。だから今は、「気に入ってる仕事」って表現に留めておく。

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