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ミエルの鬱屈した心情を描く

『君の言葉がわかりたい』の主人公ミエルは、16PersonalitiesではINFJだった。
前ジャンルから親しくしていただいている人もINFJの結果が出て、最近はINFPも出るようになったらしい。
ポンコツの私にもキレずに辛抱強く付き合ってくれる上に、ネガティブで暗い話をする印象を受けたことはないのだが、ミエルを書いていると、「なんでこの子はこんな物の見方しかせんのや…」と、なかなかにしんどい。
なんでも何も、私が、全てを拒絶するようにミエルを設定しているからである。
「物事は楽しもうと思えば、何でも楽しくなる」精神だけが唯一の取り柄みたいな人間が、膝を抱えて鬱屈として、世界を拒絶し、箱庭に引きこもっている人間を描くには、まあまあ無理があった。
ミエルが急にENFPになったら許してくれ。

大丈夫、ミエルがENFPに変身しても、レモーノは不動のENFJだからな!

INFJをちゃんと研究してください。
はい。

以前、レモーノのキャラクター設定をした際に、「恋愛物語を刷り込まれる経験を奪った」と話をした気がするが、ミエルの設定は、この逆だ。
ミエルは、誰からも何も受け取りたくなくなるほどに与えられ、受け取ることを強いられて育っている。
テリトリーのテの字も許されず、庭をぐちゃぐちゃに踏み躙られ、服の一つも選ばせてもらえず、付き合う友人も使う言葉も制限されていたような人だ。
一歩でも道を踏み外せば、死が待ち構えているような感覚で生きている。
押し黙り、耳を塞ぎ、本の中に逃げ、自分さえ我慢すれば、嵐は過ぎ去り、平穏に戻る。
それがレモーノと出会うまでのミエルの生き方だった。

そんなミエルがレモーノからの言葉を受け止められるようになったのは、第六章以降だ。
第六章までのミエルは、レモーノ本人をそのままに見ることはできず、過去から引っ張ってきた情報や常識として植え付けられた情報から、納得できるレモーノ像を作り出して、「自分の考えているレモーノと違う」を感じる度に戸惑っている。
「レモーノと自分は、ただの勉強仲間」と言い聞かせて、ただ純粋に、心も体も全てさらけ出して、レモーノとふれ合いたい、そんなことをしても痛い目にも苦しい目にも遭わせないでほしい、という想いに、蓋をしようと必死にもがいている。
レモーノもレモーノで、前述の通り、恋愛物語を刷り込まれていないので、ミエルが本当にしたいことが何なのか、レモーノから推測できないようにしている。
ミエルはいつも何かを我慢しているが、レモーノの言葉に怒っているのか、悲しんでいるのか、それともどこか痛いのか、レモーノはわかっていない。
第五章でミエルが「レモーノにキスしたいと言って、嫌われるのが怖い」と言って、初めて、ミエルが何を我慢しているのか、レモーノは気付くのである。

正直に言うと、私は最初、レモーノに恋愛関係になることを拒否させるつもりでいた。
それで悲恋に書ききれば、正直楽であったし、短い物語の方が実写化も早くできるのだが、「生涯を捧げて、レモミエちゃんのもだもだ恋愛物語を書け。死んでも一緒にいさせろ」と俺に怒られたので、少なくとも第五部まで続くことになった。
第一部第八章で、結ばれるような雰囲気が出る予定だが、この章でようやく、ミエルがレモーノの言葉を受け止めることができるようになるくらいだ。

レモーノがミエルの忘れ物を届けたことに、他意はなかったが、二人の関係が始まったのは、「レモーノが渡したものをミエルが受け取ること」からである。
そして、ミエルが、いつもならば絶対にしない、帰り道の途中で暗い公園に立ち寄ったことで、二人のラリーは続くことになった。
私は、この二人の物語の紹介に「努力」という言葉を使っており、その言葉に嫌悪感を催す人がいることも知っているが、レモーノとミエルの関係は、二人の努力の賜物以外の何物でもないので、そう紹介しているだけである。
二人の物語は、他人に何かの教えを説くための物語ではない。
二人の関係は、一時的な性欲の衝動でもなければ、運命で結ばれた唯一の恋でもない。
恋愛下手の人間が二人出会って、自分はこうだ君は何なんだと言いながら、二人で歩幅を合わせて生きていく物語である。
「ヤるだけヤッて、イージー&スピーディーな人間関係でいたい」という人は、その思い通りに生きればよく、私は「それも一つの生き方ですね」と思うだけである。
どんな生き方でも、生き方の一つでしかないのだ。


🍋🍯作品紹介

使用する言語の異なる二人が出会い、共に暮らす物語です。
二人の努力と歩みを、一緒に見守っていただければ幸いです。

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製本・電子書籍配信も考えておりますので、noteの記事のご購入やキロさんのサポートは、皆様の無理のないように、応援のお気持ちでお願いいたします。

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