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姉と仲直りの詩

魂上の仲直りの試み

私の姉は
親のすねをかじり続けながら
母を傷つける
私には無視を決め込む

ドアをきつくしめる
不機嫌なら皿を割る
それでも母に
自分の子のお弁当を作らせて
拾ってきた犬の散歩をさせる

この、強欲傲慢な怠け者
ばかじゃないの、と私が言う
恥ずかしいからやめなさい
それが火に油を注いだようで
今度はごみをベッドに撒き散らした

「しめしめ」なのか何なのか
「やってやったぞ」なのか何なのか
昔分けてもらえなかった愛情を
子ども時代の何倍もの期間をさいて
取りかえそうとしている
心が割れてしまっている

数億年が経った気がする
あなたが足を踏む草木も
見せかけのフォルクスワーゲンの新車も
ごたいそうな資格も
みんなが見ている知っている

人の成長を望むことは
人の成長を止めることだと
私は声をかけることをやめた
私は人を愛する時間を失っている
姉は一度つけた火を消せないまま
混乱のおばあちゃんになるのか

「愛しています」と唱えてみる
かつて優しさがあった一瞬も知っている
どうせ破り捨てられると、書かなかった手紙が
いつかの機会を逃していたのかもしれず
いつかの期待が苦しめたのかもしれず

魂上の仲直り

傷ついた、怒ってる
相手の至らなさを上から見てる
だいたい私が反応しているだけ
また力を使っちゃった
こんなことに

私 ほんとは仲良くしたかった
怒りがどうにもできないくらい
膨らんでしまっては
傷口にも触れられなくなってしまうというのに

ゆるせなかったひと
ありがとう ほんとひどいよ
こんな経験をさせてくれて
悪役も大変だったよね

ごめんなさい
私 どこかあなたを断罪していた
私 私をいじめてきたあなたをゆるせずにいた
まるで愛であるかのような顔で
あなたを貶めてはいなかったか

好きも嫌いも淡色に混ざり合う
傷は、ひとつの球となり
弱々しく消える
私はあなたと仲直りをする

ーーー

私が、がんになっても「大丈夫?」の一言もなかった実姉の詩です。
私はどこか期待していたんだと思います。「ごめんね、あなたを苦しめてきた」と謝ってくれると。こちらが勝手に望んだって仕方ないことです。現実世界での姉との関係修復はすべて失敗に終わりました。だからせめて魂上だけでも、と思い書いた文章です。

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