見出し画像

疾病利得の詩

私はさびしかったのかな
ふり向いてほしかったのか
それは病にならなければ
できなかったことか
私ががんになってまで

私は期待していた
あの人が謝ってくれる
大丈夫?って声をかけてくれる
大切に触れてくれる
愛してくれる

私は注目されようとしていたのか
自立したつもりの
一人暮らしの狭い部屋で
まるでゴーストみたいに「いいね」を押して
返事を待った

身体は音もなく軋んだ
私が病気になったのは
「どうして私だけ」と自分を憐れむ精神性
「あの人のせい」と誰かを断罪する精神性
「誰か助けて」と何かに依存する精神性
だったかもしれない

それで
これからも可哀想な私を続けますか
これからも被害者の態度を続けるのですか
私はわたしのことを守れなかった
加害者になるのですか

やり残したこと
いっしょけんめいスコップで掘り返して
原因さぐりばかりして
何やっているのですか

友だちが家に来てくれた
人と話せば話すほど
分かり合えないと思い知る
だからもっと笑い合えばよかった

今さらだって選んだっていいのだよ
私はひとりベッドで両手を伸ばして
私が持ちうる愛を身体に注ぐ
私はまだこの先も生きる

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?