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ピッツバーグの「薬局」で、 創作ヴィーガンポーランド料理に大興奮! 食こそ最高の薬なり。 【Apteka】


4月の中旬、ペンシルベニア州(主にピッツバーグ)に小旅行に出向きました。週末でサクッと車で巡った旅の目的の一つは、以前から気になっていたレストラン「APTEKA(アプテカ)」で食事をすることでした。

そのレストランについて知ったのは、確か去年あたりにフード関係の記事を読んでいて偶然見つけたのがきっかけです。いつかピッツバーグを訪れる機会があれば行ってみたいと思っていて今回訪問が叶いましたが、結論から言うと、またここで食事をするためにピッツバーグに足を運びたい、と思わせてくれた素晴らしいレストランでした。

訪れたこの日は義母の誕生日の前夜。
祝いの席に相応しいお料理とおもてなしで、思い出深いディナーとなりました。

予想より大箱のレストラン


APTEKA(アプテカ)」とはポーランド語で「薬局」を意味します。
メニューはなんとオールプラントベースで、ありとあらゆるハーブや野菜が駆使されており、まさに良薬になってくれそう。

客層も幅広い

到着すると店内はほぼ満席。私たちの横にはポーランド人の家族も食事を楽しんでいました。

ポーランド語と英語で書かれたメニュー


ボルシチやピエロギ(餃子)など定番のポリッシュ・東欧メニューが並びますが、素材のリストにはマジョラム、キャラウェイといったハーブや香味スパイスが入っています。おまけに「ライ麦のサワー種」「去年収穫したチェリー」と発酵食・保存食の存在もチラつき、ワクワク度が一気に高まります。

極め付けはドリンクで、ソーダ類のチョイスが「ブラックペッパー」「セロリシード」「ポピーシード」。そんな謎の飲み物が一体どこに売っているのかと伺うと、ビールやワイン類を除くドリンクは全て自家製というからびっくりです。

こんなに素敵なソフトドリンクのリストを見るのは初めて

お品書きの半分以上の料理を注文し、まずはドリンクでカンパイ。義母はダムソンプラムのジュース、義父はビール、旦那は黒胡椒ソーダ、私は冷製の炭酸ハーブティーを。

炭酸が入ったハーブティーは食事の邪魔をしないネトルのほのかな風味が爽やか。夏であればピッチャーまるまる一本飲み干せてしまいそうです。

義理であっても家族ならば当然の権利、と言わんばかりに旦那と義母のドリンクもしっかり味見。 目の覚めるような酸味が痺れるプラムジュースは果実の濃縮エキスを飲んでいるかのよう。

胡椒の粒が見える

半分怖いもの見たさもあって頼んだ旦那のブラックペッパーソーダは、いい意味でキレのあるテーブルコショーのような風味です。ブラッディマリーを考えればセロリシードはまだ理解できるとして、胡椒でソーダを作るなんて一体どういう発想なのでしょう。きっとステーキに振りかけた胡椒が勢いよく飛んでジンジャーエールに入ってしまい、飲んでみたら意外と美味しかったとかいう話だったりして・・・謎は深まるばかり、後を引く美味しさに興奮しっぱなしの一同。

夕食に甘いクレープ

一品目はクレープです。「去年収穫した」チェリーのジャムと、ヒソップシュガーのトッピング。ヴィーガンなのにどうやってこの柔らかさとモチモチ感を出しているのでしょう。私は粉物の調理が得意ではないので、是非レシピを知りたいものです。

プレゼンテーションも素朴ながら可愛い

お次は、ほっくりローストされ、塩胡椒で調味されたシンプルなポテトに、ヨーグルト(もちろんプラントベース)、プラムのコンポート、ドライアップルの一品。下にはリンゴとキャベツのサワークラウトが隠れています。甘じょっぱい組み合わせが面白い一皿。

我が家では定番

オシャレなお好み焼きのような見た目のこちらはポテトパンケーキ。ポーランド含む東欧諸国では定番で、我が家でも作ります。上に乗った付け合わせの漬物はにんじんと発酵キャベツ。パンケーキ自体は少しドライで、うちのリトアニア流の方が好みかも。

これは特に美味しかった

一口サイズに成形されたポテトダンプリングはニョッキよりも柔らかく、おそらく煮た後にフライしている様子。ライ麦のサワー種をベースにしたソースが、きゅっとした酸味で全体を引き締めています。つるんと美しくローストされたマッシュルーム、蕎麦の実の香ばしさ、ほうれん草の青々しい風味。ぜひ家で再現したい一皿。

こちらも大ヒットの一皿

お次はメインのシュニッツェル。シュニッツェルとは平たく言えば欧州風とんかつです。普通のヴィーガンレストランであれば大豆タンパクないしはグルテンミートで肉部分を代用するところを、当店ではセルリアック(セロリの根)を厚く切ったスライスに衣をつけてフライに。サクサク、ホクホク、少しトロッとした食感の構成が素晴らしいです。まろやかながらパンチのあるホースラディッシュのソースをつけて頂きます。

肉の食感に似せることが目的ならキノコ類も使えたはずですが、ありきたり・予想可能な方向には走らず、どの野菜で作ったら美味しくなるのかを真面目に考えて作られていると思います。こういう部分が個人的には好感度大。

付け合わせは、ディルをまとったローストポテト、ビーツのサラダ、リークとりんごのサラダ、そしてコールスローはさっぱりしているのに燻製されたような風味がやみつきに。付け合わせをとってもひとつひとつの完成度が高く、思わず唸りました。

どの品もシェフのセンスが光る

お食事の最後はキャベツのサラダ。スモークされたドライキャベツが、アンディーブ、蕎麦・豆類のスプラウト、発酵させたナッツ、ライ麦のクルトンといったコクと深み・苦味のある食材と合わさり、複雑かつ濃厚な食べ応えのある主役級のサラダに。こんなに美味しいキャベツのサラダが存在するなんて。これは家では真似できないぞ。

ポーランドの隣国リトアニア出身の義母にとっては、自然に囲まれたリトアニアの片田舎で過ごした若かりし日々を思い起こさせる料理に思わず胸が熱くなったようです。それをサービスの方に伝えるととても喜んでくださって、お店手作りの果実酒を特別に振る舞ってくださいました。いやぁ、ここで誕生日を祝えて本当によかった。抜かりない店選びに、自分で自分を褒めてあげたい。

いよいよ〆のデザート。

にんじんづくし

ニンジンのタルト。よくあるキャロットケーキではないところがまた良い。ニンジンのスムージーを食べているような、野菜自体の甘さと濃厚さが際立ちます。添えられたにんじんとアーモンドのアイスも美味。野菜をデザートに使用するアイデアは参考にしたいですね。

濃厚クリームとブラックカラントのジャムと一緒に

甘さ控えめのライ麦のケーキは軽くてフカフカ。お腹いっぱいなのに、するっと食べてしまいました。どうやったらこんな柔らかいヴィーガンケーキが作れるのか・・・


総じて料理のレベルがとても高い「APTEKA」。自家農園の季節の野菜やハーブをふんだんに使い、様々な調理法を組み合わせて丁寧に作られた料理には大満足です。保存や発酵といった調理法を積極的に取り入れているところにシェフの知識と技術の高さが現れていると言ってもよく、ドリンクまで作っているところに只者ではない気配さえ感じます。

店内に高く積まれた発酵・保存食品の瓶

無論ガストロノミーを除き、アメリカでここまで素材と調理のセンスがあり、小手先のオシャレではなくしっかり美味しい料理を食べさせてくれるカジュアルダイニングは超希少だと思います。

お会計も良心的で、4人で飲み食いして税・サ込で$140(約18,000円)。ついに出会えた「お値段以上」のお店。断言します。個人的にはアメリカのレストランで暫定ナンバーワンです。こういうお店に長く残って欲しいですね。ピッツバーグにはAPTEKAでの食事を目的にまた戻ってきたいと思います。


それでは、また次回。

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