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オコトちゃんの町

カーテンレースから青い光が入ってくる
午前5時半

私は天窓を開けて顔を出した
小さな屋根裏の小さな窓
私の自慢の部屋だ

まだ何にも染まっていない純粋な朝の空気が
頬を撫でる
至福の30秒

すると少し離れた向かいの家の桃子さんが
玄関を開けて出てきた
桃子さんは毎日この時間に外に出てきては
庭の愛する子供たちに水をやるのだ
その中でもザクロの木は桃子さんにとって
大のお気に入りである

「オコトちゃん 今日も黄昏てるの?」
茶目っ気いっぱいな声がする

桃子さんは私を「オコトちゃん」と呼んでいる
「七尾 琴」の「七」を省いて「オコトちゃん」と呼ぶことにしたと宣告されて2週間が経った

「桃子さん おはようございます」
私は声を少し大きめに出して挨拶をした
少々声を大きく出さないと
向かいの桃子さん宅まで届かない
とはいえまだ活動を開始していない町を配慮して
近所迷惑にならない程度の挨拶だ

私と桃子さんの朝の挨拶はルーティンになった
桃子さんがお庭の水やりを開始したので
私も窓から顔を引っ込めてお湯を沸かしに
下へおりた

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