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来訪神





「もう、まちにまってまってましたよ」

月に1回ほど往診にいくYさん

はじめてお会いした時よりも

ずいぶん年を重ね

ご高齢になられたが

クリクリっとしたリスのような

少女のような目をした

愛らしく

もしかしたら僕よりも

鍼灸のパワーを知っているかもしれない

古くからの患者さんで

施術後にいつも

気持ちよさそうな顔で


「はー先生、時々わたし
鍼灸にいかされてるんじゃ
ないかなと思うときがあるの」

うれしいことを

おっしゃってくれる

なんともありがたい患者さんだ

さて


神農さんというのは

薬の神様で

よく知られていますが

(農業や色々、人間に
文明をもたらした英雄神だ)


鍼灸の神様といえば

扁鵲(へんじゃく)いう

神様がいるんです


半分鳥で半分人間の姿

いろんな村やまちに訪れて鍼をして

人々の病を治す神様

司馬遷の史記にもでてくる

伝説の名医がそのベースになってると

思われますが

歴史的背景はさておき


「定期的にやってくる異人」

というイメージは

もしかしたら

それを迎える人のこころには

どこか

まれびと的な印象があるかも

しれません


常世やニライカナイからやってくる

わけでも 

ナマハゲでも

アカマタやクロマタでもありませんが

ときどきやってきて

痛い(?!)針をさし

熱い(?!)お灸をする

髪の長い、へんな東洋医学と

ときどき
宇宙のはなしをする

わたしは

Yさんにとっては

異人にちがいないなー

と思うのです

さてさて

施術が終わり

玄関で
帰り支度のわたしの背中へ

「先生、また来月もまってますよ」

愛らしい声で

Yさんはそういった


もしサポートしていただけたら、とってもとっても励みになります