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飲まず嫌いを克服・観光と酒

先日、『引きこもりバックパッカー:マイペースにゆるく海外を旅する思考法』という本をKindleにて出版しました。期間限定で1節毎無料公開しています。
ぜひ、コメント欄やツイッターなどで感想を教えて下さい。


公開済みの記事はこちらから↓
https://note.com/ryo11193/m/m599114c5ac6f


日本に居場所がないなら海外を旅すればいい。「海外に興味があるけどハードルを感じている」「これまでと違った景色をみたい人」「引きこもりがちな人」
そんな人たちがこれまでよりも旅が身近になるような、マイペースなゆるい旅とは? 海外旅に興味がある人、引きこもり生活に飽きた人、新しい自分に出会いたい人、必読。”引きこもりながら”海外を旅してきた筆者が提唱する、脱力系バックパッカー論。
りょいち                                 1997年生まれ。東京都出身。同じFラン大学に2度落ち、行ける大学がなくなる。約3年間の引きこもりの後、中学英語もわからない中、初海外で所持金6万円とバックパック1つ単身でジョージアへ。それがきっかけでそのまま4ヶ月間で計15ヶ国を旅した後、ワーホリビザで2ヶ月間オーストラリアへ。帰国後はインターンを経た後、ベンチャー企業でフリーランスとして活動しつつ、自身でIT企業を起業。
(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

ぼくは海外に行くまでの21年間、全くといっていいほどお酒を飲んでいませんでした。覚えているのは、子供のころに親の焼酎を水と間違えて飲み干したくらいで、自ら飲酒を好んでいた人生ではなく、飲み会の類もこれまで経験せずに生きてきました。昔から酔っぱらいが苦手で、それを反面教師に「絶対に酒は飲まない」と思って生きてきたのですが、その価値観が海外で変わることになります。

 今日では旅先でのお酒を楽しみにしている人もいますが、歴史的な観点からもお酒と旅は切っても切り離せない関係にあります。前述した「バックパッカーは自由に旅する人」に書いたように、バックパッカーの原点はイギリスのグランド・ツアーにあります。

18世紀後半からイギリスにおける産業革命による工業化により、時間に余裕ができるようになりました。観光のための空間だけでなく、観光時間も産業革命に伴って生み出されています。
19世紀初頭までの西洋社会では、出来高払いだった農民や職人を中心とする労働者の労働時間は曖昧なものでした。(注:4)

出来高払いの仕事は、強制されることが少なかったものの、急遽仕事が中止になることもありました。オーストラリアの田舎で農業をしていた時も、今日は収穫量が少ないという日は午前中に仕事が終わり、逆に収穫量が多い日は午後まで働くという労働環境でした。

仕事がいつ終わるかはその日働いてみないと分からないので、一緒に働いていた人たちは安定してお金がもらえる時給制の仕事に魅力を感じて、転職する人も少なくありません。このように出来高で働くと、自由度が高い代わりに労働時間も固定されないため、不安を感じる人も存在します。

しかし、産業革命によって工業化が進んだことで、19世紀中頃には、出来高払いであった仕事が工場労働という時間によって定められるものになっていき、労働時間は秩序立てられ、効率と生産性に駆り立てられた時間へと変わっていきました。そして、このような新しい労働時間によって、自分のための自由時間という余暇時間も明確に創り出していきました。(注5)


お酒と旅

 余暇時間の過ごし方として、イギリスでは産業革命による工業化以前からパブリックハウスにおける飲酒が主なものでしたが、18世紀にオランダから伝わった蒸留酒のジンが人気を集めたことで、酩酊者が増えました。こうしたなかで、工場経営者、行政改革家、禁酒運動家などの一部は、飲酒のような粗野なものではなく、もっと上品で合理的な余暇活動を労働者に与えるべきだと考えるようになります。

 そこで飲酒が社会問題化し、1820年代には禁酒運動が始まります。飲酒に変わる新しい余暇活動として、1840年代には公園や運動場、図書館、博物館などが設置されていくようになりますが、その中で人気を集めたのがトマスクックによるパッケージツアーでした。禁酒運動家であったクックは、禁酒大会への参加者を運ぶために、1841年に団体割引鉄道旅行を組織し、大成功を収めたこの取り組みを皮切りに、飲酒に代わる健全な余暇活動として、観光旅行の普及に奔走するようになります。(注6)

 そのため観光は、18世紀後半からのイギリスにおける産業革命を通じて誕生したと考えられています。(注7)
 
 禁酒の代わりになるはずの観光旅行でしたが、今日では観光旅行が飲酒に変わるものになっているというよりは、旅行と飲酒をセットで楽しんでいる人が少なくありません。

 クックの理想と反して、ぼくも一緒に旅をしていた酒好きの旅人に「お酒はコミュニケーションツールの一つ」と言われたことがきっかけで禁酒を解禁しました。

これまで酔っ払いの悪いイメージが先行していましたが、その旅人の一言で飲む量をコントロールするなど適度な距離感でお酒を飲んでみるのもいいかもと考えを改めるようになります。

お酒を飲まないと本音で話せないという価値観は未だに理解できませんが、お酒を飲む人が多い以上、「お酒は絶対に飲まない」と決めてしまっては、その人達とのコミュニケーションの機会損失になるんです。
 


荷物を捨てるということ

 捨てる意識は価値観以外にも通じます。旅の道具を何で運ぶか、荷物が重いとどうしても行動に制限が加わるため、いかに必要最低限に抑えるかが、旅を成功させる重要なポイントの1つです。特に旅慣れていない人や長期旅行者は荷物が多くなりがちで、あったら便利なグッズをリュックに詰め込むも、結局使うことがなく、ただただ重い荷物のせいで移動が苦になる、ということが往々にしてあります。

 「何かあったらどうしよう」という不安が大きい人ほど荷物も多くなりますが、その何かはほとんど起きないと割り切って、荷物を減らすと移動がかなり楽になります。

 ぼくは機内持ち込みが可能の7キロ弱のリュック1つで6ヶ月ほど海外を旅していました。荷物が増えないように、「コンパクトなものを持ち歩く」「必要なものは現地で買う」「捨てる意識を持つ」この精神で旅をしていました。

 持ち物は旅の目的や期間によっても変わってきますが、極論、今の時代はスマホ1つあれば何とかなってしまいます。

特に荷物においては、捨てる意識を持つ、新しいものを買ったら既存のものを一つ捨てる、こうすることで本当に大切なものしか買わないようになりますし、同時に不要なものを捨てる習慣がつくので持ち物が減ります。

「新しく買うものは今のものより大切か」を考えることも衝動買いの抑止力になり、物を買うコストが減ることで、決断する時間も減るので別のことに時間を使えます。

 イランで全ての荷物を盗まれて買い物袋で旅している旅人がいました。盗まれたときはかなり落ち込んでいたそうですが、結果的に必要最低限の荷物になったことで移動にストレスを感じることがなくなったそうです。

大量の荷物を抱えて旅をすると移動がストレスになります。そして、荷物による不安やストレスがフットワークをどんどん重くしていきます。毎回移動のたびにストレスも付いてくることを考えれば、多少お金がかかっても荷物が少ないほうが確実に旅を楽しめます。

 お酒を飲むという決断に話を戻すと、「お酒は飲まない」という自分の価値観を捨てたとき、これまで沢山の機会損失をしていたことに気が付きました。

不要な荷物を減らす感覚で、自分の可能性を妨げうる価値観を捨てることで今までの自分が知らなかった新しい世界を知ることになりました。今の荷物がもしかしたら、これからの自分の可能性を妨げているのかもしれませんし、何かを手離すことで新しい何かが手に入ることもあります。


(注:4)「現代観光学」遠藤英樹・橋本和也・神田孝治 編著 寺岡伸悟・山口誠・須永和博・森正人 著『現代観光学-ツーリズムから「いま」がみえる』(新曜社、2019年1月31日)、24頁)
(注5):「現代観光学」遠藤英樹・橋本和也・神田孝治 編著 寺岡伸悟・山口誠・須永和博・森正人 著『現代観光学-ツーリズムから「いま」がみえる』(新曜社、2019年1月31日)、24頁)
(注6):「現代観光学」遠藤英樹・橋本和也・神田孝治 編著 寺岡伸悟・山口誠・須永和博・森正人 著『現代観光学-ツーリズムから「いま」がみえる』(新曜社、2019年1月31日)、24・25頁

(注7):「現代観光学」遠藤英樹・橋本和也・神田孝治 編著 寺岡伸悟・山口誠・須永和博・森正人 著『現代観光学-ツーリズムから「いま」がみえる』(新曜社、2019年1月31日)、24頁

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次回は第2章「セクハラ体験も解釈変えればプラスになる」を無料公開します。

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