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MOBA-TPS(FPS)の思い出と小考察

2024年9月の初旬、標題のMOBA-FPS(またはTPS)の分野に、対照的で趣深いニュースが流れています。
すなわち、
Valve製のMOBA-TPS、DeadLockが好評

Sony製のMOBA-TPS、Concordがサービスイン10日で終了

大人気ジャンルであるFPS・TPSとMOBAと、双方要素を組み合わせることで最強のゲームができるのでは?
という命題への挑戦は長らく続いていますが、今回はくっきり明暗が分かれてしまいました。今回の失敗について、「似たようなゲームがあるので成功の確率が低い中、際立つ面白さや魅力がないので仕方ない」という毒にも薬にもならぬコメントが目につきますが、本MOBA-TPSなジャンルは失敗の歴史であり、もう少し細かい指摘が出来そうなので筆をとることにしました。
 本記事では、過去の成功したゲームと挑戦的な(往々にして短命な)ゲームとを振り返り、"人気の出るMOBA-TPSには、どのような要素が求められるのか?"という問いに関して、いちゲーマーが簡単に分析したいと思います。私見ですが、本ジャンルは概ねファーム要素(試合内でリソースを稼ぎ、操作キャラクターを育成する)の有無により、"Overwatchフォロワー(ヒーローシューター)"と"TPS化したMOBA"に分類できると考えています。

偉大なる開拓者Overwatch

 多くは説明しません。往時の勢いこそ失いましたが、定番にして鉄板のMOBA-FPSとして存在感は残っているかと思います。執筆者はOWの初プレイ以前にMOBA経験もFPS/TPS経験ともにあったのですが、以下の要素に惹かれて夢中に(プレイ時間1000時間超)なったものと考えています。
〇集団戦を楽しむ
 MOBAに連なる対人ゲームの一番おいしいところである多対多の集団戦を何度も起こし、何回か勝ったチームが試合を取ります。
MOBA流:レーン戦で築いた有利を集団戦に持ち込み、キャラクターの育成状態が異なる無数のコンディションの中で多対多が起こる
銃撃ゲー流:時間帯やファーム成否によるキャラ性能差はなく、集団戦のセットアップ・キャラ組み合わせ・スキルタイミングが勝敗を分ける
レーン線や強いファーム要素にはもちろん好き好きがあるとは思いますが、執筆者は後者の方が好みです。
〇自己効力感
 適時適切な状況を判断し、適時適切にUltを決めれば試合に勝てます。
エイムの調子が良い日はウィドウで1人2人HS決めれば試合に勝てます。
カウンターピックの妙により、局面によりキャラクターを切り替えることで有利展開にできます。
〇キャラクター性の売り込み
 設定を作りこみアニメを作りキャラの掛け合いを実装し…、とコストをかけて種々の施策を実行することで、キャラクターの背景と個性が浸透するよう綿密に計画されていました。お気に入りのヒーローで活躍したい!というモチベーションは、ゲームプレイにとってとても健全な後押しとなったことでしょう。また、ゲンジやハンゾーのクールジャパンデザイン・D.VAやキリコの日本人受けするスキンなど、いわゆるポリコレ迎合しか眼中にない珍妙な見てくれに陥らず、真の多様性を実現していると思います。

Paladins

 今となっては埋もれたゲームとなってしまいましたが、良くも悪くも影のOverwatch、双子の恵まれなかった方 という印象です。十分な人口とは言えませんが現在もプレイできます。執筆者のプレイ時間は200時間くらい。
細かい所の改善点や、OWとの差別化点は以下のものをあげることができ、ゲーム体験を向上させる気概は感じられます。
〇非戦闘時における自動回復が実装
 タンク・ヒーラー必須のようなロール縛りを一定回避。
〇コスト内でスキルポイントを振り分け、キャラクターをカスタマイズ
 同じキャラクターでも、生存重視スキルでフランカーする/弾幕形成スキルに振って正面で戦う みたいなカスタムが出来ました。Battleriteに似たようなシステムがあります。(知名度的に伝わらない気がする)
〇豊富なキャラクター
 実装が速く、OWにいない新鮮な操作感のキャラクターも多数。
足を引っ張ったのは以下の要素でしょうか。
▲グラフィックが二世代前
▲ロール縛りが一切ない+試合中のキャラチェンジ不可
 理不尽な編成負けが時々発生します。
▲テンプレ感を感じるキャラが多く掘り下げもなし

ガンダムエボリューション

1年と短命でしたが、ガンダムOWに求められるクオリティは有しており、OWクローンとして一定の評価を得ていたと思います。
〇ステップ・ブーストによる移動に関わる操作感向上
〇ガンダムIPの強さ、キャラ性能への落とし込み
〇ロール縛りの緩さ
▲バランス調整やマップ更新頻度低
▲マネタイズに失敗していそう(わざわざ原作にない色のスキンを買う人はいたのだろうか)
 サザビーの前斧投げを見てみんなで突撃したり、月光蝶にフォーカス決めて落としたり。ドズルザクにはまた乗りたい。

Bleeding Edge

「近接戦に特化した4v4のMOBA-TPS」。執筆者は数十試合プレイ。
▲自己効力感の欠如
 近接戦特化!と銘打ったタイトルに共通する、地味な押し引きによる逆転要素の少なさが目立ちました。敵の近くでボタンを押すと、必中の攻撃が飛び相手のHPが減る。ひたすらこの繰り返しです。
▲有料
▲ボーダーランズやMADMAXの雰囲気をさらに先鋭化した凶悪なキャラクターデザイン 
 定量化はできませんが3番目は結構主要因だったのでは……

MOBAなのかヒーローシューターなのか

 上記は、レーン戦やファーム要素のない、スポーツ系TPS/FPSにスキルファイト要素を融合したタイプのゲームです。"OWフォロワーのMOBA-TPS(FPS)"と言って差し支えないでしょう。2024/9までには、二匹目のドジョウは出現しなかったと判断して良さそうですが、各ゲームともにOWの短所の克服を目指しブラッシュアップされた点、独自要素との融合などに光るアイデアがあったように思います。来るMarvel Rivalsは、このハードルを越えられるでしょうか。
 一方、MOBA-TPSの土俵では、レーン戦やファーム要素のあるゲーム群が長らく覇を競ってきました。TPS操作で特徴的なスキルをもつヒーローを操作し、オブジェクトにからむ勝利目標をかけて対戦する というフォーマットこそ共通するものの、ファーム要素を中心にゲームシステムをよりMOBAに近づけた群、すなわち"TPS化したMOBA"の群です。残念なことに当ジャンルの生き残りは少なく、"水底に多数の遺骸が眠るブルーオーシャン"と言える状況です。

LORD of VERMILION ARENA

豪華なスクエニIPと当時としては及第点のグラフィック、まだLoL以外の様々なMOBAが多数世に出ていた時代のMOBA-TPSです。
〇オーソドックススタイルで~20分の試合時間
 3レーン+ジャングル、ミニオンラストヒットで稼ぐ、タワーを壊してレーンを押して本拠地を陥落させる、の一連の流れをきちんと短時間に押し込めていたものと記憶しています。
〇スキル(=召喚獣)の組み合わせをコスト内で自在編成する圧倒的自由度
▲スキル(=召喚獣)の組み合わせが面白いのに結構課金しないと揃わない
▲バランス調整不足
生まれてくるのが早すぎた、に尽きる。 シャコQ→ルブランW→アムムRができたのは理不尽だったかも。

Crucible

アマゾン初のゲームタイトル、新感覚MOBA-TPSということで鳴り物入りでサービスインした記憶。執筆者は数十試合プレイ。
〇オーソドックスを壊したゲームデザイン
 ジャングルを陣取りゲームしながらファームし、オブジェクトのラストヒットを多くとると勝利 というレーン戦の概念のない複雑なゲームデザイン。本当に新鮮で、ファーム効率を上げる陣取りルートの構築や、1点捨てた時に最大リターンを得る戦略を考えたものです。
▲異なる(そして目新しい)ゲームルールの共存
 上述のハンターモード以外に、コイン集めやバトロワのようなモードがあり人口が分散していました。
▲戦略の不透明性
 戦略の理解が深まる余地があったはずなのですが、ゲーマーコミュニティがそこまで熱意をもって攻略するに至りませんでした。初手からMOBAの基本ルールからの逸脱&色々用意してしまったのは、プレイヤーコミュニティに負担が大きすぎたといえるでしょう。
▲エフェクトやミニマップが見にくい
 細かいところが行き届いていない、というやつです。
▲いまいちなキャラクターデザイン
 StarWarsの変な宇宙人枠だらけだった記憶があります。

Second Wave

「アニメ調キャラクターで領域争奪戦なMOBA-TPS」 。執筆者は5試合ほどプレイ。※サービスインから終了まで21日
〇堅実なゲーム体験
 影の優等生Paladinsのシステム・操作感を、アニメ調のキャラクターでくるんだ印象。
〇オーソドックスを壊したゲームデザイン
 領域キャプチャの基礎ルールに、ファームによる装備購入でキャラ育成、序盤のマップ支配やレイトキャリーの育成戦略などのマクロ要素。Crucibleにかなり近い。
▲有料
▲貧弱な通信インフラ、マッチング障害
決して出来の悪いゲームではなかった印象ですが、開発に資金がなかったのが最大の敗因ではないかと。

Paragon: The OverprimeとPredecessor

どちらもParagonのアセットを作って作られた正統派MOBA-TPSの兄弟。執筆者は前者のみ数十試合経験。
〇オーソドックススタイルで~30分の試合時間
 3レーン+ジャングル、ミニオンラストヒットで稼ぐ、タワーを壊してレーンを押して本拠地を陥落させる、の一連の流れをある程度短時間に押し込めていたものと記憶しています。
 細かいところだと、LoLのバロンに当たるオブジェクトが、とにかくでかいヘラルドになっており、こいつを獲得して護っていると試合を畳めます(分かりやすい)。また、TopレーンとBotレーンがワープホールで繋がっており、テレポート全盛のLoLも真っ青なレーン戦中のお祭りガンク合戦が楽しめました。
〇とっつきやすいアメリカンヒーローなキャラクターデザイン(原作流用)
▲画面がうるさく、情報量過多
 本質的にMOBA-TPSは、対面の行動把握+ミニマップの把握+状況把握といったMOBAの状況管理と、エイムや自分のスキル回しといったTPS対戦ゲームの両方をこなすことが求められます。これができないうちは、"何もわからないうちに試合が進んだ" 感に陥ってしまいがち。それなりに体験のよいMOBA-TPSは、画面の情報量を減らす工夫がされていると感じます。リアル調のグラフィックでMOBA-TPSを作りこむ場合、かなりの洗練が必要かと思います。
▲致命的なフックスキルやAoEの範囲が分かりにくい
 TPS視点と画面の情報量問題で、とにかく距離感の把握が困難。
▲エフェクトやミニマップの見にくさ、ミニオンの行動の分かりにくさ
 細かいところが行き届いていない、というやつです。
後者は前者の失敗を反省にバランス調整を行い、最近正式サービスインした模様です。正直Deadlockと似すぎているようにも思えるので、予断は許さない状況かと。

総括

ゲームの総合評価は、加点要素でしっかり稼ぎ、減点要素を極力減らすことでしか向上しません。下記OWとLoLのおいしいところは過たず引き継いでほしいところです。
〇キャラクター性の売り込み
〇MOBAの華である集団戦
〇銃撃ゲームの自己効力感
〇適切な情報量を与えるグラフィックとUIの洗練

一方、以下の要素を含むMOBA-TPSは概ね悲劇的な最期を迎えています。
▲魅力のないキャラデザ(往々にしてポリコレの過剰な意識)
▲有料販売
▲準備不足≒(宣伝不足ときどき作りこみ不足)
むべなるかなConCordはこちらに全て該当しているように思います。
今後、新たなMOBA-TPSが現れたときには、以上の要素に注目するとメタ視点的に面白いかもしれません。

なお執筆者は、S4 LeagueのようなスポーツTPS×オブジェクト絡みの試合目標×装備カスタマイズによる緩いロール制×アニメ調可愛いグラフィック、な感じの対人ゲームの復権を願ってやみません。がんばれStrinova。

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