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240131 ずぶ濡れ

 バイト先のGH(グループホーム)はオープンから1か月も経っていなくて、各シフトの役割分担はまだあいまいである。世話人の固定シフトも超流動的だ。朝、TARO先生(オーナーであるドクター)からLINE電話が入って、「あした日勤どうですか?」なんてことが起こる。掃除と洗濯ぐらいしかできないわたしにまで電話がかかってくるほどだから相当困っている。そしてわたしはそういう急な出動要請にはたいてい応じられない。世話人職で契約のある人全員に電話をかけて全員無理だと施設長が入ることになる。結果、1月最終週の施設長は、2連続夜勤の後そのまま日勤に突入し、翌日また夜勤、しかも夜勤3回のうち2晩は満室状態、などというめちゃくちゃな働き方になってしまった。さらにその間に、サビ管(サービス管理責任者)が1月末で退職を申し出て、とっととホームを去って行った。
 サビ管ほどの影響はないにしても、平日夕勤週5日で入ったはずの人も最初の1週間でいなくなった。そのときもTARO先生から電話があった。「夜勤週1で考えていたんですがね、夕勤週5はどうですか?」「いや、それは無理」「週3回ぐらいならいけるかな?」「場合によります」……LINE電話の記録によれば1分12秒でその会話は終わっている。
 結果、平日夕勤の常勤者が決まるまでのつなぎでわたしが少し多めに夕勤に入ることになった。その分、夜勤は免除ということで2月のシフトが送られてきて、見たら、1月最終週、つまり今週は夕勤4連勤になっていた。しょうがないなぁ。まあわたしが介助らしきことはほぼ何もできないことはTARO先生も施設長もわかっているのだから、期待されているのは夕飯の準備と片付けがメインでときどき風呂上がりの着衣を手伝ったり歯磨きを手伝ったりするぐらいだろうとOKの返事をした。

 そして夕勤4連勤の2日目。サビ管はリビングのテーブルでPC開いてずっと事務仕事をされており、そこは入居者さんたちも座って、歌を歌ったりiPadで動画を見たりただ座っていたりするところなので、正直言ってほんとに邪魔だった。空いているショートステイの部屋へ行ってやれよ、と思ったが、まあ最終日なので誰も何も言わなかった。
 さてではシンクに溜まった洗い物から片付けるかね、と始めたところへ夜勤さん出勤。施設長は日勤のままいて世話人3人になり、バイタル取ってと言われて洗い物を途中でやめて入居者6人のバイタルを順番にとっていく。サビ管、邪魔である。
 生理の人を確認して入浴の順番を決める。そしたらなんか行きがかり上、わたしが入浴介助をすることになった。

 えっ、できるのか? まあやるしかない。

 やりました。障害が軽度の1人を除き、5人は入浴介助が必要なので、上と下と靴下を脱いで入浴介助用の格好になって、さあ来い!と。
 そのときわたしは浴室で支度の整った入居者さんから順に入ってくるのを待てばいいのだと思っていた。ところが脱衣室に各自の着替えやタオルを入れたバスケットが次々と運ばれてくるのに、入居者さんはまだ来ない。「誰から~?」と浴室から大声を出したら、双子ちゃんが二人そろって脱衣室に入ってきてしまった。おっと一人は生理中のはず。その一人をリビングに連れて行ってる間に扉を開けっぱなしの脱衣室で残った一人が次々と服を脱いで床にぐちゃぐちゃに積み上げていた。扉を閉めて、脱いだものをランドリー袋に入れて、上がった後の着替えが入ったバスケットを見たらバスタオルも浴用タオルも身体を洗うタオルも何も入っていない! しかし双子の片割れちゃんはもうすでに素っ裸だ。仕方なく、ホームの浴用タオルと身体用のナイロンタオルを持っていっしょに浴室に入る。

 助かるのは、みんなお風呂が大好きだということだ。シャンプーを嫌がる人がいないし、自分で洗えないところを代わりにわたしがもう一度洗うのを嫌がる人もいない。ほんとに助かる。強いて言うなら、お風呂が大好きすぎて浴槽につかったまま出てきてくれないことである。皆さん、身体が大きいのでわたし一人の力では引き上げられない。自分の意思で「風呂から出よう」と思っていただかないと出してあげられない。これはとても焦る。早く出ないとこの人、倒れてしまうんじゃないかとすごく焦る。

 で、マニュアルによれば、お風呂から上がった人は夜勤の人が引き継いで着衣を手伝い、ドライヤーで髪を乾かしてリビングに戻ってもらうはずなのだが、昨日の夜勤さんは「えっ、それは日勤の仕事でしょ」と言った。で、日勤さんを探したがその他の入居者さんの着替えを用意する等々でてんてこ舞いの様子。しかたないので、わたしがずぶ濡れのままドライヤーまでやった。着替えのバスケットに靴下や肌着や替えの生理用ナプキンが入っていなければ日勤さんを呼んでもいいのだが忙しそうで申し訳なく、わたしが二階に駆け上がって居室からとってきて着せた。

 これを5人。全部終わって浴室を掃除していたら、夜勤さんが、「そこはもういいから帰る時間までに業務日誌と支援記録を書いて!」と呼びに来た。えっ?もうそんな時間なのか……とリビングに戻ったら19時30分だった。わたしは風呂場に1時間半もいたことになる。
 しかし、支援記録と言われても……。食事の様子も見てないし、入居者さんたちのデイサービスの連絡帳も見る時間がなかった。支援したのは入浴だけだ。なんなんだろう、この仕打ち。ちくしょーと思ったので業務日誌に、「皆さん、入浴がお好きな様子で介助がしやすく助かります。ゆっくりと入浴できました」と嫌味を書いてやった。嫌味のつもりだが、通じてないかもしれない。

 ともかく初めての入浴介助、誰も教えてくれないままやってしまったけど、事故なしで完了。浴室の掃除を終えてすぐ着替えたが、帰り道、ずっと頭痛がしていた。風邪引いたかも?

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