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SR400に乗るということ

オートバイに乗っています。
2016年式のヤマハSR400。

1978年にデビューした後、細かい改良を受けているとはいえ基本設計や構造が変化しないまま販売され続けた古いオートバイ。

最新鋭のマシンの様なスパルタンさは持ちようがありませんし、ドライブモードセレクトやブレーキコントロールの様な、便利機能も安全装備もありません。ETCの設置場所すらありません。

オートバイに乗ること自体、雨に打たれ、風に曝され常に転倒のリスクを伴う。公共交通機関や車での移動と比べて、快適でなかったり気楽でない点が確かにあります。

更にSR400の場合、高速移動が苦手です。
設計が古く構造がシンプルなため振動が大きいこと、現代のオートバイと比較して頼りなくなるほど細いタイヤを履いていることが原因です。
タイヤに至っては、チューブタイヤという自転車と同じ仕組みのタイヤです。

そのため長距離を移動する時も、高速道路ではなく一般道を走ることが多くなります。
一般道で500Km程度の距離を移動するには、12時間以上かかることを覚悟しなくてはいけません。

まるで、SR400というオートバイの欠点ばかりを書き出しているようですが、そうではありません。

高速移動が苦手だから下道に連れていってくれる。
初めて来る街や、知らない田舎道に連れていってくれる。
自転車の様なアップライトな乗車姿勢と、スピードを出せないが故の、のんびりとしたツーリングは自然と景色を観る余裕をもたらしてくれます。

乗車時間が長時間になりがちだからこそ、時間の移ろいや気候の変化を体感させてくれる。
日没に空が紫に染まる景色を見せてくれる、寒さに震える背中に朝日の暖かさを感じさせてくれる。

走り疲れて休憩から戻るとSR400は常に光を纏って輝いています。

鉄とアルミで作られたクラシカルな車体は、陽の光や街の灯りを反射して、息を呑むほど美しいと感じることがあります。

今では製造中止になってしまったSR400。
時代が求める環境対応を果たせないためとのこと。
暗い街灯の下にポツンと停まるSR400に、時代の変化やテクノロジーの進歩から取り残された悲哀を感じました。

それでもいいんだ。僕も同じだから。
機械は古くなるし、いつか壊れる。
僕も同じように歳をとっていく。

人生を共に歩んでいるんだ。
我ながら大袈裟だけどSR400に乗っていると、そんな感傷を呼び起こします。
SR400は、とてもセンチメンタルなオートバイです。




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