見出し画像

ジャズのセッションとは何ぞや

前回アイリッシュセッションとは何ぞやという記事を初投稿しました。今回は、同じ「セッション」でも実態は全く違う、ジャズにおけるセッションについて書きたいと思います。

京都のジャズバーcandy

概要
一般的にジャズのセッションは、ジャムセッションと呼ばれ、コンボ形式(少人数の楽器編成のこと)で行う即興性の高い音楽のことを指します。これらの音楽は主にジャズバーなどでプロたちによって演奏される他、アマチュアのプレイヤーもセッションバーなどに集まってこぞって演奏を行ったりしています。使用される楽器は多岐に渡りますが、一般的な楽器としては、サックス(テナー・アルト等)、トランペット、トロンボーン、ピアノ、ギター、ベース、ドラムなどがあります。他にもビブラフォンやヴァイオリン、アコーディオンなども使用されることもあります。


演奏について
ジャムセッションではよく定番のスタンダード曲が演奏されます。日本のジャズ界隈では黒本と呼ばれるベーシストの納浩一さんが出版されたスタンダードを纏めた本の他、Real Bookなどに載っている曲がよく演奏されます。また、有料のアプリにはなりますが、コード譜が載っているi Realというアプリも有名です。さて、ジャズでは、曲のメロディーのことをテーマと呼びます。演奏形式としては、最初のイントロの後にテーマを演奏し、各楽器奏者がその曲のコードやリズムに合わせてソロをとっていき、最後にもう一度テーマに戻るというのが定石です。この時最初と最後のテーマを演奏する楽器奏者をフロントと呼び、一般的には一人が演奏します。残りの奏者たちはフロントがテーマ演奏中は伴奏をつけたり、オブリガート(助奏)をつけたりします。

いわゆる黒本


ソロと構成について
まず、ソロをとる順番についてですが、普通は、テーマをとったフロントからスタートして、他のホーン奏者へつなぎ、その後にギター・ピアノ、ベースへとつなぎます。それぞれテーマの尺の何周か分を適宜アドリブで演奏し、わかりやすいように次の楽器奏者へとソロのバトンをつなぎます。最終的にベースソロまで終わるとドラムソロを行うのですが、よく行われるドラムソロに8バースや4バースという概念があります。例えば8バースであれば、ベースソロ後にフロント楽器が8小節冒頭からソロをとった後にドラムソロが入り、その後に前述の順番でソロを交代交代に回していくというものです。4バースの場合も同様に4小節ごとに交代でソロを回します。稀にドラムソロをテーマ一周分することもありますが、かなり長いのでロスト(曲のどの部分にいるのかわからなくなってしまうこと)してしまうこともあります。

アドリブについて
ジャズの一番の醍醐味といえば、やはり自由にアドリブができるところです。しかし完全に自由と考えるのは時期尚早かもしれません。ジャズの楽譜の下には必ずコードが書いていて、アドリブをする際はそれをある程度参考にして、コードトーン(そのコードの構成音)を意識したメロディーを即席で作らなければいけません。また、そのコードによって使えるスケールも異なり、ただただランダムに音を選んで鳴らせば良いというものではありません。しかしただただコードトーンを追ってばかりでもつまらない演奏になりかねないので、時にはアウト(スケールから逸脱した音を使うこと)をすることも必要になってきます。また、ジャズ特有のリズムを意識して、自由にリズムチェンジを行ったり、アクセントをつけたり同じリフの反復して強調するなど聴衆を飽きさせない工夫も必要になってきます。また、アドリブ中に他のジャズのスタンダード曲のテーマを引用したり、歴史的な演奏のソロを少し引用することもあります。これもやはりセッションにたくさん参加しながら身につけるしかないかもしれません。



バッキングについて
ピアノやギターなどのコード楽器は、フロントがテーマを弾いている時や他の楽器奏者がソロを弾いている時に裏で軽やかに伴奏を行います。このことをバッキングやコンピングといいます。この時、コード表記のあるルート音(一番下の音)はベースが弾いているため、あまり目立つようには弾かず、ルートレスや転回形の形でコードを弾くことが一般的です。また、それぞれの楽器の音量やソロの雰囲気に合わせてバッキングを行うことも重要です。例えばベースがソロを行っている時は、高音成分を補いながらもベースに注目が集まるようにあえて小さな音でバッキングを行うなどの配慮が必要です。このようなことを考えながらコード楽器は曲の全体の雰囲気を作り上げることに貢献しています。

曲の終わり方
ジャムセッションでの曲の終わり方には何パターンかあります。まず、最後のテーマのメロディーを素直に弾いて飾り立てて終わる方法が一番やりやすいかもしれません。また、逆循環と言われる繰り返しを何度も行って終わる方法があります。逆循環をするときは最後の4小節を3回もしくは、何度も気の済むまで繰り返してキリの良いところで終わることが多いです。その他にも誰かしらがアウトロをつけて終わる方法やリック的なアウトロを付ける場合もあります。曲によっては冒頭のイントロの部分に戻ってそれをアウトロとして演奏して終わる曲もあります。(All the things you areやBlack Nileなど)


最後に
ここまで話すとジャムセッションを見にジャズバーやセッションバーに行ってみたいという人もいるかもしれません。幸い、東京近郊にはたくさんのジャズ・セッションバーが林立しています。有名なところで言えば、高田馬場のJazz Spot Introや、朝霞台の停車場、毎日ジャムセッションを行っている錦糸町のJ-flowなどがあります。特に高田馬場のイントロは週末になると始発までオールナイトジャムセッションが開かれており、仕事終わりのアマチュアのサラリーマンからライブ終わりのプロミュージシャンまで幅広い客層が高いレベルのセッションに参加しています。その上、ミュージックチャージなしで1000円から聞きでも弾きでも参加できるようになっています。なかなか敷居が高いと思われがちなジャズの世界ですが、いざ一歩踏み入れてみるとそこのあなたもジャズの奥深さにハマってしまうかもしれません。

高田馬場のJazz Spot Intro


今回はかなり専門的な語彙をたくさん使ってしまいましたが、今後好評であればそれらについてももっと深く解説していきたいと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?