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レジェンドたむら的M-1グランプリ2021考察

今や年末恒例の国民行事の一つと言っても過言ではない「M-1グランプリ2021」が今年もやってきた。優勝は”M-1グランプリ史上最高齢のまさのりさん50歳”を擁する『錦鯉』であった。昨年大会4位からの優勝ということで結果だけを見れば順当な優勝にも思えるが個人的には事前予想は大きく外れ驚きの結果となった。
ただし、実際の番組をみた上で考えれば最終決戦3組も錦鯉優勝もまったく異論はない。

M-1グランプリ2021開幕

さて本題に入ります。ざっくり総評としては「例年並みのレベル」だったと思います。目に見えての大きな爆発がなかった分、少し不完全燃焼に感じた方もいるかと思いますが全体のレベルが高く甲乙つけがたい大会だったと思います。
実際に「なんでこの組が決勝進出してるの?」というお笑いファンの声は非常に少なかったように思います(ランジャタイに関しては芸風のイメージとして賛否は合ったかと思いますが)

数多の芸人が準決勝を独自審査してもだいたいが決勝メンバーと同じ名前をあげていました。その他で言えば「ヨネダ2000」と「金属バット」の名前がよく聞こえてましたが。

予想に関してはまぁまぁ当たった方かなとおもいます。
というか結構カチカチな結果になりましたね。
昨年の決勝組が最終決戦3組に。これは2016年以来。

個人的に”正統派”とされるしゃべくり漫才が好きで、さらにその会話の中でコンビ2人の人間性が見える漫才だったり、例えばミルクボーイのような斬新なシステムを搭載した漫才が好きなので事前予想段階では「錦鯉」の優勝はない(というか決勝進出すら予想してなかったレベル)と思っていましたし、しいて言えば「マヂカルラブリー」の優勝すら昨年も予想できていなかった。
この2年は個人的にしっかりと反省し、学びに繋げなければと思います。

敗者復活戦についてはまた別機会で書ければと思いますが今年は少し納得は出来ない結果だったかなと感じてます。思想は強い方なので。

①モグライダー 95点

名前が呼ばれた瞬間に悲鳴を上げてしまった。
先に言うと「本当にもったいなかった」という出来の漫才。
アンタッチャブル柴田を彷彿とさせるツッコミ芝のスタイルは、後半に盛り上がる漫才が有利とされるM-1にマッチしたものだと当初から思っていました、が今回もトップバッターながらその片鱗はしっかりと見せつけてくれたように思います。
またネタ自体の切り口も面白かった。これまで見たことあるネタだと「郷ひろみのモーニングルーティン」や「玉置浩二にもっとごはんを食べさせたい」など設定がまず意味不明なことが多かったのですが今回はちゃんと意味が分かる上で面白いネタだったと感じました。
何度も言うようですがこれで5番手以降を引けていればネタ自体の勢いもあって最終3組にいけたような気がしてます。
自分は後で後悔してもいい。というか例年から考えてもこれだけ笑うネタはそんなにいないと考えて基準点90点+5点加点をつけました。
上沼恵美子が今年も93点をつけてましたが後半にとんでもないインフレ採点してるのでそこまで意味がなくなったのが残念です。

②ランジャタイ 90点

今大会注目のジョーカーがまさかの2番手に。
ランジャタイにしても何組か出てきた後に一気に空気を変える方が向いているため非常に厳しい戦いになったと思います。
昨年巻き起こった「漫才か、漫才じゃないか論争」の新たなる論点になるかと思いましたがネタ自体はちゃんと漫才として見れた印象です。
やっぱりフリが効く前にランジャタイを見てしまったことにより裏切り力がいまいちなかったのかなと思いました。
2回目見てもやっぱりバカバカしくて笑ってしまった良ネタだったと思います。あのバカ設定をしっかりと伝えられるボケ国崎のマイム力がすごい。

③ゆにばーす 91点

M-1グランプリのことを出場者の中で一番熱く考えてる男・川瀬名人。
最初に見た2017年よりも明らかにうまくなっているハラちゃん。
お互いが正論をぶつけ合う中でズレが生まれてそこに笑いが起こるという完成度の高いネタ。
ただ個人的に、男女コンビゆえの「エロい目で見てる」「おっぱい触らせろ」などのフレーズが少し笑いづらさを起こしてる気がして120%ネタに入り込めなかった印象。
あとランジャタイの影響も少なからず受けたのかなと思いました。

④敗者復活組:ハライチ 85点

いや絶対に金属バットやったろ。というのはさておき。
ネタは敗者復活戦とはまた違う”M-1ラストイヤーのハライチ岩井がどうしても決勝の舞台でやりたかったネタ”
普段の澤部のノリツッコミをフリにして岩井がはちゃめちゃになる。
自分はあんまり好きじゃなかったです。笑えなかった。
あとさすがに敗者復活戦も決勝も5分以上ネタやったことは何かしら減点対象として扱われるべき(という敗者復活戦って時間過ぎたらステージ上が赤くならなかったけ?いつから変わったの?)

⑤真空ジェシカ 92点

言葉遊び系や偏差値の高いボケが好きなので真空ジェシカは昔から注目してました。かなり期待はしてましたが期待に漏れず序盤から切れ味鋭いボケが続きました。
ただ基本的にはボケとツッコミのリズムが常に一定でもう少し最後に向けて盛り上がってほしかったのが残念な印象を受けました。饅頭屋のおばあさんの伏線も最後回収してほしかったかなぁ。
好きな言葉は以下の通りでした
「5秒秘書の比嘉です」
「罪人と書いて”つみんちゅ”」
「これ隣町の地図・・・踏めますか?」
「冗談は縦置き」
「江夏のジャイロ回転」
「おばあちゃんは全員文系」
「ミッキーは一人じゃないすか」
「ハンドサインでヘルプミーってやってた」
「今年の駒沢が舐められてる」
ほぼ全部好きやん。

⑥オズワルド 93点

3年連続決勝進出の優勝候補最右翼のオズワルド。
さすがの貫禄を見せつけるカッチカチの漫才。
今まで以上にボケの畠中が存在感を発揮。
最終決戦にもっといいネタを残してるのではないかと感じたくらいには余裕の試合運びだったと思いました。
なお最終決戦にもっといいネタを残してるわけではありませんでした。笑

⑦ロングコートダディ 92点

若き天才・堂前が創るロコディワールド全開の漫才。その世界観に確実に引き込まれました。ただ圧倒的な爆笑を続けて取れなかったことが気になる。
ワゴンR以降に急に収束していったところが少し勿体なかったなと感じました。
毎回ネタの切り口が天才過ぎる堂前の大喜利力。ぜひIPPONグランプリに出場して座王第2の刺客として実力を全国民に見せつけてほしいと思ってます。

⑧錦鯉 94点

そこまで大きな期待はしていなかったものの昨年から大きく進化を見せつけてきた50歳と43歳のおじさんコンビ。昨年よりもバカにはさらに磨きがかかってました。期待してなかったとはいえ当日の自己採点では94点の2位にしてたことからも面白かったことに間違いなかった。
今回はしっかりとツッコミの渡辺さんが熱を持った怒り型になっておりM-1の空気にバッチリとハマったように感じました。
「山手線ゲーム!!!!お題は50歳で痛くなるところ、せ~の!!!」
「ひ~~~~~~ざぁぁぁぁぁぁああああああああああ!!!!!」
が今大会のベストワンフレーズな気がします。

⑨インディアンス 95点

事前予想では対抗扱いとしていたインディアンスがさすがの実力を発揮。
2019年と同じ9番手でしたが前回の反省をしっかり生かしてコンディションを整えてきてたと思いました。
漫才の実力は折り紙付きなので普段通りにやれれば最終決戦は堅い。
会場の大笑いしたい空気を爆発させた錦鯉。その波にしっかりと乗って大爆笑に繋げたように感じました。

⑩もも 93点
「大穴」予想として、2019年ミルクボーイを思い出させるようなシステム漫才を持つ個人的に一番期待していた『もも』
ただ出順が10番手、かつ手前で錦鯉とインディアンスという大騒ぎ系の漫才が続いたので少し観客も疲れ切ってしまっていたように感じました。
声もしっかり出ていたし笑いもしっかりとれていたけどどうも大爆発の波を起こせなかったのが非常に残念でした。
システム漫才なので一回バレてしまうと次のハードルが上がってしまう。
東京ホテイソンにも言えますが基本形とする今の形が一番面白いので改悪しないようなバージョンアップに期待したいです。

最終決戦

「オズワルド」「錦鯉」「インディアンス」の最終決戦となりました。※個人評価では「モグライダー」「インディアンス」「錦鯉」でした。

1組目の「インディアンス」は1本目と同じようなテンポ漫才。安定感のある技量と笑い量を見せてくれましたがなんとなく優勝を感じることができないまま終わったように感じます。

2組目の「錦鯉」は猿になった50歳のまさのりさんが大暴れ。とにかくバカが過ぎる。何も考えずに笑えるボケがお茶の間にもしっかり伝わったように思います。最後、おじいちゃんをしっかりと横にする渡辺さんというシュールなネタ終わり。この2組ならば「錦鯉」に軍配か。

最後は優勝候補で首位通過の「オズワルド」
普通に1本目と同じくらいのネタができればほぼ優勝というところで何故か爆発が起きない。そして焦って噛む。錦鯉が作った空気に完全に飲まれてしまっていたように思います。ネタ自体も1本目よりも弱く感じましたが、ネタ自体は普段は一番ウケてるものらしく完全に飲まれた結果に。これはもしかして…

上戸彩お決まりの「結果はCMのあとで~♬」の間に優勝者予想。
笑いの量なら「錦鯉」ですが、正統派を推すなれば「オズワルド」か。
ただ「錦鯉」も別に”漫才ではない”ネタではないので昨年ほどは正統派推しだけでは票は集まらないかと思い、自分は「錦鯉」になるかと感じました。

結果は
優勝:錦鯉 5票(松本、礼二、富沢、志らく、塙)

2位:インディアンス 1票(上沼)

2位:オズワルド 1票(オール巨人)

となりました。今年の審査結果には全く異論はないかと。
50歳のガチ泣きに涙をもらったお茶の間の方は多いかと思います。
前日にたまたま「浅草キッド」を見てたうちの嫁も泣いてました(笑)

まとめ

最後に、今年限りでオール巨人・上沼恵美子が審査員を引退されるとの報道がありました(実際のところはまた来年末になるまでわかりませんが)
現状の審査員7名体制も4年目になり来年は大きな変革がある可能性は非常にあります。
個人的には今の審査員のバランスは非常にいいと感じているのであまり大きく変更はしてほしくないですが強いて言うなれば
・ノンスタイル石田(若手のネタもしっかり見てる上に実績がある)
・海原やすよ(NGKの看板にまで上り詰めた上方女流漫才師の筆頭)
あたりになればあまり批判も多くないのかなと思います。

また敗者復活組はやはりトップバッターを任される方がいいと思いました。やっぱり1回は負けてるわけで、決勝9組よりも悪条件を課されるのは当然であってほしいと思います。もちろんサンドウィッチマンの優勝ストーリーもM-1の歴史において重要ではありますが。去年のインディアンスの出来を見てもトップバッターになっても別にワンチャンないこともないと思います。

また今年で17代目王者が決定しました。2015年から新M-1となって早6年。
出場制限がコンビ結成15年目までになって、より精度の高い漫才が見れるようにはなりましたが、その反面「いつまでこのコンビおるねん」と感じる部分もあります。
来年あたりに「2025年からは出場制限コンビ結成10年以内」に戻すという発表があったら面白いと感じます。
R-1のようにいきなり制限をかけるのはさすがに可哀想なので”3年”の猶予を与えて。
やはり”コンビ結成10年以内”のM-1グランプリこそが発起人であった島田紳助の目指すものになるかと思います。
今年で言えば「もも」とか数年前の「ミキ」「東京ホテイソン(初期型)」あとは決勝進出できていないですが「四千頭身」なんかはもっと評価されていいくらいに若いうちからスタイルを確立できていると思います。
やっぱり若手漫才師のまだ粗削りながら面白い発想が評価されるほうが新しい才能が見れて楽しいかなと思います。

それではまた次回。たむら


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