無謀な挑戦

習得したPSGの技術を
思いっきり使ったデモ曲を
カセットテープに録音し
封筒に入れた

それがどれだけのものか
どう評価されるのかわからない
全くの井の中の蛙状態で仕事をしてきた
他のゲーム会社のことなんてわからない

今でもはっきりと覚えているその時のこと
赤いポストに勇気を振り絞って投稿した

宛先は「任天堂 音響制作室宛」

募集などしていない
届くかどうかもわからない
メールなどない時代
それは封筒に入れられ郵便で届くのだ
もしかしたら、会社の受付で破棄されるかもしれない
いや、それが一番可能性が高いだろう
どこの誰かもわからない人からの郵便物だ
そのままゴミ箱行きかも
そんな思いとほんの僅かな望みを胸に
ポストの投稿口で勇気を振り絞って手を離した
それは私の人生の中でもかなり上位にくるほど

無謀で思い切った行動だった

もちろん郵便物には
住所、名前、電話番号を書いて
ぜひ、貴社に入社してこの技術を生かしたいとか
そんなことを書いていたのだと思う

それから何日後だったかは記憶にないが
ある日一通の手紙が届いた
任天堂 音響制作室からの返事だった

届いた!!

音響室の人の手元に届いたのだ
すごい!届くんだ!
それだけでもびっくりした
手紙の返事はこうだった
私の遠い記憶で覚えてる限りではあるが
「カセットテープ聞きました。
いま国内でこれだけの技術を持っている人がいるということに
驚かされました
ぜひ私としては一緒に仕事をしたいと思います
人事に掛け合ってみますので
「私と音楽」というテーマでのレポートと
履歴書を送ってください」

そういう内容だったと思う

返事が来たことに驚き
その内容には喜びよりも驚きがあり
興奮と緊張の入り混じった
なんとも言えない感情の中
私は大急ぎで履歴書とレポートを書き
ポストに投稿した

それからはなかなか返事が来なかった
だめなのかな・・・
そう思ったとき返事が届いた

ドキドキする
どうだったんだろうか
思い切って開けた封筒の中には
想像していなかった言葉が書かれていました

「必死に人事にあなたを採用したいこと訴えました
しかし
人事からは今募集をしていないという理由で
受け入れられないと言われました
何度も説得しようと試みましたが
とても無理なようです
僕自身も、受け入れてもらえないこの会社で
働くことが嫌になり独立しようと思います
僕と一緒に会社を作りませんか
ということでした
(遠い記憶なのでこの通りではないと思います)

若干22歳、社会に出て1年しか立っていない私には
独立して会社を作るということが
どういうことなのかわからなかったのです

どうしたらいいのだろう・・・
この先私

しかし
この無謀な行動が
後に奇跡を呼ぶことになる


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