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#565 「学校法人 コングレガシオン・ド・ノートルダム事件」福岡地裁小倉支部

2022年6月22日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第565号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【学校法人 コングレガシオン・ド・ノートルダム(以下、C法人)事件・
福岡地裁小倉支部決定】(2021年12月15日)

▽ <主な争点>
転居を伴う異動命令の保全必要性など

1.事件の概要は?

本件は、甲市および乙市にそれぞれ学校を設置する学校法人であるC法人が、甲市所在の学校で勤務していたXに対し、乙市所在の学校での勤務を命じたところ、Xが、同勤務命令が無効であると主張して、乙市所在の学校で勤務すべき義務のないことを仮に定めるよう求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<C法人およびXについて>

★ C法人は、乙市に所在するA1高等学校、A2中学校等(以下、高等学校および中学校を併せて「A校」という)を設置する学校法人である。甲市に所在していた学校法人Bは、同市内においてB1高等学校、B2中学校(以下、高等学校および中学校を併せて「B校」という)等を設置していたが、2008年9月、C法人に合併された(以下「本件合併」という)。

★ Xは、1993年4月、B法人の常勤講師として採用され、1994年4月、同法人との間で労働契約を締結して(以下「本件労働契約」という)、B校教諭の辞令を受けた者である。なお、Xは2015年3月に甲市所在の土地建物を購入している。


<本件解雇意思表示の無効、本件配転命令に至った経緯等について>

▼ C法人代表者は2016年2月、Xに対し、同年度の授業を担当させることはできない旨通知した。

▼ C法人は2017年8月22日付で、Xに対し、解雇の意思表示をした(以下「本件解雇意思表示」という)。

▼ XはC法人を被告として、同法人がXに授業を担当させなかったことが違法であると主張して、慰謝料のほか、本件解雇意思表示の日までの期間について、実際に支給された給与および賞与と、授業を担当した場合の給与および賞与との差額の支払等を求める訴訟をした(福岡地裁小倉支部。以下「前件第1事件」という)。

▼ Xはその後、C法人を被告として、本件解雇意思表示が無効であると主張し、労働契約上の地位を有することの確認、本件解雇意思表示の日以降の労働契約に基づく賃金の支払等を求める訴訟を提起した(福岡地裁小倉支部。以下「前件第2事件」という)。

▼ 福岡地裁小倉支部は、前件第1事件と前件第2事件を併合した上、2019年11月、前件第1事件について一部認容し、前件第2事件について全部棄却する判決を言い渡した。

▼ Xは同判決のうち、前件第2事件について棄却された部分を不服として控訴を提起し、福岡高裁は2020年8月、本件解雇意思表示が無効であると認定した上で、Xが労働契約上の地位を有することを確認し、C法人に賃金として2017年9月から判決確定まで毎月43万7409円の支払を命ずる判決を言い渡した(以下「前件控訴審判決」という)。

▼ C法人は前件控訴審判決に対して上告受理の申立てをしたが、最高裁は2021年1月、上告不受理決定をした。

▼ C法人は2021年10月16日付で、Xに対し、着任日を2022年1月5日として、数学の教諭としてA校勤務を命ずる通知書を交付した(以下、同法人によるXに対するA校での勤務命令を「本件配転命令」という)。


<C法人のB校における就業規則の定めについて>

★ C法人のB校における就業規則には、以下の規定がある。

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