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#8 「東京相和銀行事件」東京地裁

2003年10月8日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第8号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【東京相和銀行(以下、T銀行)事件・東京地裁判決】(2002年2月27日)

▽ <主な争点>
懲戒解雇の情報を再就職先に漏洩されたことの違法性など

1.事件の概要は?

本件は、勤務していたT銀行に懲戒解雇され、F社に再就職したXがT銀行に対し、違法な懲戒解雇を受け、知人等から白眼視されるという精神的苦痛を被ったこと、また、再就職先のF社でも退職を余儀なくされたのはT銀行を懲戒解雇されたという情報を漏洩されたことによるものであり、その後再就職できず、精神的苦痛を受けたことも違法な懲戒解雇が原因であるとして、不法行為による損害賠償を請求したもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Xについて>

★ Xは、昭和41年4月、T銀行に入行した者である。


<Xの解雇、F社への再就職と退職等について>

▼ XはT銀行経堂支店長だった平成元年7月当時、D社への融資に多額の損失(貸し倒れ)が発生した。

▼ 3年6月、T銀行は事故審査委員会において、当時は人事部に在籍していた
Xに上記D社の件につき弁解等を尋ねた。

▼ 同年7月、XはT銀行から書面で懲戒処分を受けた。この通知書によれば、懲戒の理由はD社への融資について判断を誤り、T銀行に多額の延滞融資金を発生させる不利益を与え、また同銀行の信用を大きく失墜させたことが就業規則の懲戒解雇事由に相当するというものであった。

★ 本件通知書には、懲戒解雇に処すべきところを情状酌量し、退職金を支給しない諭旨解雇* とするので、所定の手続をとること、Xがこの手続をしないときは懲戒解雇とすることが記載されていた。

*「諭旨解雇」・・・説得に応じなければ懲戒解雇というような強い圧力をもって退職を迫るもので、退職勧告とは若干趣が異なる。「諭旨」とは、そうすることが本人の身のためであることを思っての取り計らいである旨を言い聞かせること。

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