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#416 「レガシィ事件」東京地裁

2016年7月20日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第416号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【レガシィ(以下、L社)事件・東京地裁判決】(2015年3月27日)

▽ <主な争点>
機密保持義務の存否と情報漏洩行為該当性など

1.事件の概要は?

本件は、L社らが「Xは業務上の機密を第三者に漏洩した」との理由で、同社らの下で就労していたXに対し、労働契約上の機密保持義務違反による債務不履行に基づく損害賠償として、各々200万円等の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<L社、L法人およびXについて>

★ L社は、金融、財務、その他の資産の管理および運用に関する総合コンサルティング業務、経営コンサルティング業務、会計事務代行業等を目的とする会社である。

★ L法人は、他人の求めに応じ、租税に関し、税理士法2条1項に定める税務代理・税務書類の作成および税務相談に関する事務等を行うこと等を目的とする税理士法人である。

★ Xは、平成22年1月、L社およびL法人のそれぞれとの間において、雇用契約を締結し、同年9月30日までの間、同社らの下で税務スタッフとして就労していた者である。

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<本件漏洩行為、本件データの別件における利用等について>

★ L社らは税務スタッフであるAらに対し、「集計シート」と呼ばれるデータを作成させていた。この集計シートは従業員各自について、担当する顧客名を業務ごとに整理し、一部には報酬金額の時間単価を記載した欄を設けた上、当該従業員がその顧客からの受任業務を処理するのに費やした作業時間数が日々の欄に記載されている表形式の文書である。

▼ Xは雇用期間中にL社らが管理するサーバー上のフォルダから、すでに退職していたAほか数名の元従業員に係る「集計シート」(以下「本件データ」という)を自己のUSBにダウンロードし、事務所から持ち出した(以下「本件持出行為」という)。Xは同社らを退職後、本件データをAに渡した(以下「本件交付行為」といい、本件持出行為と併せて「本件漏洩行為」という)。

▼ L社らの従業員であったAらは平成23年中に同社らに対し、未払残業代の支払を求める訴えを提起した(以下「別件訴訟」という)、別件訴訟においては、本件データをプリントアウトした書面がAらの労働時間に係る主張を根拠づける書証として提出された。

▼ L社らは別件訴訟の証拠として、本件データを書証として印字した書面を23年12月に受領し、その後、AがXから本件データを入手したことを知った。

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<L社らの就業規則について>

★ L社およびL法人の就業規則には、いずれも次の規定がある。

(服務心得)
第31条 社員は、常に次の事項を守り服務に精励しなければならない。
2.自己の職務上の権限を越えて専断的なことを行わないこと
4.会社の業務上の機密および会社の不利益となる事項を他に漏らさないこと
5.会社の…製品および書類は丁寧に取扱い、その保管を厳重にすること
6.許可なく職務以外の目的で会社の設備、車両、機械器具その他の物品を使用しないこと

3.元社員Xの主な言い分は?

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