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#615 「明治安田生命保険事件」東京地裁

2024年6月19日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第615号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【明治安田生命保険(以下、M社)事件・東京地裁判決】(2023年2月8日)

▽ <主な争点>
適性評価により有期雇用契約が期間満了で終了することがある旨の合意など

1.事件の概要は?

本件は、XがM社に対して、同社との間で締結されていた労働契約は、(1)主位的には無期労働契約であり、(2)予備的には有期労働契約であっても、M社の行った雇止めは無効であると主張して、当該労働契約に基づき、次の各請求をする事案である。

1)労働契約の権利を有する地位にあることの確認
2)2020年8月から本判決確定の日まで、毎月24日かぎり、賃金として月額25万円およびこれらに対する遅延損害金

2.前提事実および事件の経過は?

<M社およびXについて>

★ M社は、生命保険業等を目的とする相互会社であり、全国の営業拠点で、同社と無期労働契約を締結した「MYライフプランアドバイザー」と呼ばれる営業職員が生命保険商品の販売等を行っている。

★ Xは、M社との間で、2020年3月、営業職員として、アドバイザー見習候補契約(労働契約)、同年4月1日、アドバイザー見習嘱託契約(以下「本件見習契約」という)を締結した者である。


<本件見習契約の内容、Xの雇止めに至った経緯等について>

★ 本件見習契約が労働契約である点に争いはなく、同契約の内容として、主たる勤務場所をM社の甲支社乙営業所とし、月額賃金を25万円とするほかは、以下の点が定められていた。

(1)契約期間は、アドバイザー見習第1期間(契約日から契約月末日までの1ヵ月間。以下「第1期間」という)およびアドバイザー見習第2期間(契約日翌月1日から1ヵ月間とし、各月末日に更新を行う。更新は2回とする。以下「第2期間」という)とする。

(2)第1期間の契約期間中において、アドバイザー見習営業嘱託規程に定める第2期間移行基準を達成し、かつ、M社が適当と認めた場合、第2期間に移行する。

(3)第2期間の契約期間中において、アドバイザー見習営業嘱託規程に定めるアドバイザーB(1号級)格付基準を達成し、会社が適当と認めた場合、MYライフプランアドバイザーとして採用する。他方で、同アドバイザーとしての職務遂行に必要な能力・適性が十分でないと会社が判断した場合、各月末日をもって本契約を終了する。また、アドバイザーB(1号級)に採用されなかった場合は、契約期間満了月の末日をもって本契約を終了する。

▼ 本件見習契約は、2020年5月1日、第2期間に移行し、第2期間は同年6月1日および7月1日にそれぞれ1ヵ月間延長されたが、7月17日にM社はXに対し、MYライフプランアドバイザーとして労働契約を締結することはできない旨を通知し、退職の手続を進めたいと連絡した。

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