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#384 「中央労働基準監督署長事件」東京地裁(再々掲)

2015年4月15日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第384号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【中央労働基準監督署長(以下、C労基署長)事件・東京地裁判決】(2014年6月23日)

▽ <主な争点>
会社の忘年会後にラーメン店での飲食等を経て、発生した転落死事故が通勤災害に当たるか否かなど

1.事件の概要は?

亡きXは甲社に勤務していたところ、平成21年12月4日、同社が会員となっている社団法人「乙」の委員会および同委員会の後の蕎麦屋(本件蕎麦屋)での忘年会(本件忘年会)に出席した。

本件忘年会は午後8時頃に中締めされたが、Xを含む残った参加者はそのまま本件蕎麦屋で飲食を続け、同日午後10時30分頃に終了した。さらにXは本件忘年会に参加していたAとともに徒歩でラーメン店に赴き、午後11時15分頃、同店を出て、Aと池袋駅で別れ、翌5日未明、自宅に帰る途中、駅のプラットホームから転落するなどして死亡した。

本件は、Xの配偶者であったYが22年3月、C労基署長に対し、労働者災害補償保険法(労災保険法)に基づく遺族補償給付および葬祭給付の請求をしたところ、同署長は同年8月、いずれも支給しない旨の処分をした(本件処分)。Yは審査請求、再審査請求をしたが、いずれも棄却の決定および裁決を受けたため、本件処分の取消しを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<甲社、「乙」、XおよびY等について>

★ 甲社は、医療機器であるMRI施設のシールド材の販売および測定・計測関係を目的とする会社であり、21年12月当時、東京事務所を東京都文京区に置いていた。

★ 「乙」は、画像医療システムに関する標準化の推進、品質安全性の確保、技術の向上等を図ることにより、関連産業の健全な発展等に寄与すること等を目的とする社団法人であり、主として医療機器である放射線機器のJISRA規格の統一および国内の標準化、学会および展示会の支援ならびに工業会の分科会等での意見交換等の活動を行っているところ、甲社は「乙」の会員となっていた。

★ X(昭和44年生の男性)は、平成3年4月、甲社に雇用され、21年12月当時、同社EMC部営業課長代理の職にあり、東京事務所に勤務していた者である。なお、Xは普段から家ではビール500mlを2本くらいおよび焼酎500ml2本くらい飲酒しており、酒には強い方であった。

★ Yは、Xの死亡当時、その配偶者であり、Xの収入により生計を維持していた者である。

★ Xが甲社東京事務所から居宅に帰る際の通勤経路は、徒歩で本郷三丁目に行き、東京メトロ丸ノ内線で池袋駅に行き、同駅で西武池袋線に乗り換えて武蔵藤沢駅に行き、同駅から自転車で自宅に向かうというものであった。

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<本件事故に至った経緯等について>

▼ 「乙」のサイト設備設計専門分科会のMRI施設における安全基準委員会(以下「本件委員会」という)に係る平成21年度第8回の会議が同年12月4日午後3時30分から、東京都文京区所在の「乙」事務所において行われた。

▼ Xは同日、「乙」事務所に赴き、本件委員会の会議に出席した後、同委員会の忘年会(以下「本件忘年会」という)に出席するため、「乙」事務所から徒歩で5分程度の距離にある蕎麦店(以下「本件蕎麦店」という)に赴いた。

▼ 本件忘年会は同日5時35分頃、各自、生ビールで乾杯し、その後は焼酎を飲みながら歓談した。Xは料理の注文の取りまとめや参加者に対する酌等をしていたこともあり、Xが飲酒のため酔っていたという印象を持つ参加者はいなかった。同日8時頃、参加者らは中締めとすることとし、その後も残った参加者は午後10時30分頃まで本件蕎麦店でそのまま飲食等を続けた。

▼ Xは本件忘年会に出席していたAとともに本郷三丁目駅に向かう途中、ラーメン店(以下「本件ラーメン店」という)に赴き、レモンサワーや餃子等を注文した。

▼ Xは本件ラーメン店を出た後、同日午後11時35分頃、池袋駅でAと別れ、翌5日午前零時30分頃、西武池袋線の石神井公園駅のプラットホーム上にいたところ、走行していた電車と接触し、同電車は接触地点から約57メートル進行して停止した(以下「本件事故」という)。

▼ Xはプラットホームから転落し、頭部を強打し、頭蓋骨多発骨折、左肋骨骨折および左足関節骨折等の傷害を負い、同日午前2時過ぎ、頭蓋内損傷により死亡した。

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<本件処分から本件訴えの提起に至った経緯等について>

▼ Yは22年3月、C労基署長に対し、遺族年金および葬祭給付の請求をした。しかし、同署長は同年8月、「本件、サイト設備設計専門分科会忘年会の中締め後およびラーメン店で飲食した行為は、厚生労働省令で定める『日常生活上必要な行為』とは認められず、逸脱・中断後の災害のため」との理由で、Yの各請求につき、いずれも不支給の処分をした(以下「本件処分」という)。

▼ Yは本件処分を不服として、同年10月、東京労働者災害補償保険審査官に対し、審査請求をしたが、上記審査官は23年8月、審査請求を棄却する旨の決定をした。

▼ Yは同月、労働保険審査会に対し、再審査請求をしたが、前記審査会は24年4月、上記再審査請求を棄却する旨の裁決をした。その後、Yは24年10月、本件訴えを提起した。

3.亡きXの妻Yの主な言い分は?

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