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#303 「独立行政法人 日本原子力研究開発機構事件」神戸地裁(再掲)

2012年1月25日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第303号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【独立行政法人 日本原子力研究開発機構(以下、G機構)事件・神戸地裁判決】(2011年6月21日)

▽ <主な争点>
出向先の調整規定に基づく出張旅費等の減額など

1.事件の概要は?

本件は、三菱電機(以下、M社)の社員で、平成11年8月から約2年間にわたり、G機構の前身である日本原子力研究所(以下、原研)に出向し、ドイツに長期外国出張をしていたXが外国出張中に支給されるべき給与を一方的に減額されたとして、主位的に原研の権利義務を承継したG機構およびM社に対し、共同不法行為に基づく損害賠償を求め、予備的にG機構に対し、Xに対する未払出張旅費の支払いを求めるとともに、M社に対し、出向者が出向先で正当な処遇を受けるよう配慮する雇用契約上の債務の不履行による損害賠償の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<G機構、M社およびXについて>

★ G機構は、平成17年10月、原研と核燃料サイクル開発機構とを統合して設立された独立行政法人であり、原研の一切の権利および義務は国が承継する資産ならびに独立行政法人 理化学研究所が承継する権利および義務を除き、G機構が承継した。

★ M社は、東京都千代田区に本社を置き、全国に研究所、支社・営業所および製作所・工場を設置し、各種電気機械器具の製造販売を業とする会社である。

★ Xは、昭和51年4月、M社に入社し、平成16年3月に退職するまで、電機品に関わる技術の研究・開発に従事してきた。

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<Xの原研への出向、ドイツへの出張等について>

▼ 原研は原子力に関係する業務を行っている民間会社から出向職員を受け入れていたところ、昭和59年5月、M社との間で出向社員の受け入れに関する協定(以下「本件協定」という)を締結した。

▼ XはM社から原研への出向を命じられ、本件協定に基づき、平成11年8月から13年7月まで2年間原研に出向した。

▼ Xは原研から国際熱核融合実験炉に関する研究のため、ドイツに11年8月3日から13年7月20日まで出張するよう命じられた。その後、Xは同年8月1日、M社に復職した。

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<原研からの出張旅費の支給、本件減額措置等について>

★ Xに対する出張旅費は本件協定により、原研の職員に関する規程である旅費規程(以下「本件旅費規程」という)および外国出張旅費支給基準(以下「本件支給基準」という)にしたがい、原研からXに直接支払うこととされており、Xは出国前に原研から11年8月3日から12年8月2日までの出張旅費の支払いを受けた。


★ 本件旅費規程第37条第1項(以下「本件調整規定」という)の内容は、以下のとおりである。
第37条(旅費の調整)第1項
理事長は旅費の性質上または地方の実情等により、この規定による旅費定額を支給することが適当でないと認められるときは、これを減額し調整することができる。

▼ 原研は本件調整規定に基づき、長期外国出張者の旅費について減額調整措置をとることとして原研の理事長が決裁を行った(以下「本件決裁」という)。なお。本件決裁は回議書による書面回議の方法で行われた。

▼ 12年5月、原研の人事課長らはドイツに赴き、Xを含む長期外国出張者13名に対し、長期外国出張者の出張旅費のうち滞在費を減額する旨の説明を行った。

▼ 原研は同年8月、Xに12年8月3日から13年7月20日までの出張旅費471万1400円を支払ったが、この支給額は本件調整規定による調整前の本件旅費規程および本件支給基準により算定されたXに対する出張旅費につき、滞在費について526万8000円の減額を行った後のものである(以下、本件決裁に基づきXに対する出張旅費のうち滞在費を上記のとおり減額した原研の措置を「本件減額措置」という)。

3.元出向社員Xの言い分は?

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