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#50 「さえき事件」福岡地裁小倉支部(再掲)

2004年8月18日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第50号で取り上げた労働判例を紹介します。


■ 【さえき(以下、S社)事件・福岡地裁小倉支部判決】(1998年9月11日)

▽ <主な争点>
アルバイトの不正行為申告義務

1.事件の概要は?

本件は、S社が経営するコンビニエンスストアでアルバイト店員として勤務していたAらが、レジを不正操作するなどの方法により、窃盗行為またはその幇助行為を繰り返したとして、同社がAらに対し、損害賠償を請求したもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社の雇用状況、Aらの業務内容等について>

★ S社は、昭和59年6月、Y社との間でフランチャイズ契約を締結し、コンビニエンスストア(以下「本件店舗」という)を経営していた会社である。本件店舗の営業は年中無休で、営業時間は午前6時から午前0時までであった。

★ S社では、主婦パートを約4名、学生アルバイトを約6、7名ずつ雇用してきた。そして、平日は午前8時から午後5時までは2名の主婦パートを、午後5時から午前0時までは2、3名の学生アルバイト配置するものとして、各従業員のローテーションを組んで、交互に勤務させていた。

★ Aらは、S社にアルバイト店員として雇用され、主に午後5時から午前0時までの営業時間帯に本店店舗で勤務していた。その業務内容は、店番(商品の案内、盗難防止)、商品の陳列、販売(レジ操作)およびその補助(レジを売った商品の袋詰めと店内の防犯の監視)、清掃等であった。レジ業務はS社の指示により、補助者とペアになって行うものとされていた。

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<Aらによる不正行為の発覚に至った経緯等について>

▼ AらはS社代表者が本件店舗から離れている時間帯に、その方法を他の従業員から教えてもらい、またはそれを見て自分も行っても構わないと考え、それほど抵抗感を抱くことなく、次のような不正行為を行うようになった。

(1)客として来店したAら従業員や知人に対し、サービスと称して、購入しようとする商品の一部につき、バーコードをレジに通さなかったり、洋酒等のバーコードのない商品については一旦レジに入力した後、その場でクリアーキーで消去するなどの方法により、その分の代金の支払いを受けないで商品を不正に取得させる。

(2)本件店舗の倉庫に入り、代金を支払わないで、保管中のジュースやパン等の商品を飲食する。

(3)倉庫内に保管中の商品を、ゴミ捨て用の段ボール箱の底に隠し、その上にゴミを載せてゴミ捨て場に置いておき、帰宅時に代金を支払わないで、そこから商品を持ち帰る。

(4)非番の従業員が本件店舗に来て、勤務中の従業員から監視カメラの監視位置を教えてもらい、倉庫の鍵とビニール袋を受け取り、監視カメラの死角を通って倉庫内に入り、代金を支払わないで商品を持ち帰る。

▼ 本件店舗にはかねて防犯用の監視カメラが6台設置してあったが、平成4年9月、顧問税理士のUから利益率が低下している旨指摘を受けたことから、S社代表者は閉店後の侵入者による窃盗や客による万引きの可能性を疑い、店舗と倉庫の出入口の施錠を強化したほか、営業時間中の万引きに対する監視体制の強化を図った。

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