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#370 「八千代交通事件」さいたま地裁(再掲)

2014年10月1日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第370号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【八千代交通(以下、Y社)事件・さいたま地裁判決】(2011年3月23日)

▽ <主な争点>
解雇無効の確定判決後の年休申請など

1.事件の概要は?

本件は、解雇により2年余りにわたりY社から就労を拒まれたXが同社を相手に労働契約上の権利を有することの確認等を求める訴えを提起し、その勝訴判決が確定して復職した後、合計5日間の労働日につき、年次有給休暇の時季に係る請求をして就労しなかったところ、労働基準法(労基法)39条2項所定の年次有給休暇権(年休権)の成立要件を満たしていないとして、上記5日分の賃金が支払われなかったため、Y社を相手に年休権を有することの確認および上記未払賃金の支払いならびにY社がXに対し年休権の行使を認めなかったことが不法行為に当たるとして損害賠償の請求をしたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<Y社およびXについて>

★ Y社は、一般乗用旅客自動車運送事業等を営む会社である。

★ Xは、平成17年1月、Y社にタクシー乗務員兼特命事項担当の正社員として採用され、同社との間で期間の定めのない雇用契約が成立した者である。

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<本件解雇無効確認等請求事件等について>

▼ Y社は平成19年5月16日、Xに対し、同日をもって解雇する旨の意思表示をした(以下「本件解雇」という)。

▼ これに対し、Xは同年8月、さいたま地裁に本件解雇の無効確認および未払賃金の支払いを求める訴えを提起した(以下「本件解雇無効確認等請求事件」という)。

▼ 本件解雇無効確認等請求事件について、さいたま地裁は21年7月29日、本件解雇は無効であり、XはY社との間において、労働契約上の権利を有する地位にある旨の判決を言い渡し、同年8月17日の経過により同判決は確定した。

▼ Xは同年9月4日、Y社の職場に復帰した。

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<Y社の就業規則、Xによる有給休暇届の提出等について>

★ Y社の就業規則には、年次有給休暇について次のような定めがある。

第37条(年次有給休暇)
会社は労基法39条1項の要件を有する従業員に対し所定の年次有給休暇を与える。
 会社は、労基法39条2項の要件を有するに至った従業員に対し所定日数の年次有給休暇を与える。
 年次有給休暇の、その総日数は1年間20日を限度とする。
 年次有給休暇の残日数は、翌年にかぎり繰り越すことができる。

★ Xは19年5月16日時点において、未消化の年休権を1日有していた。

▼ XはY社に対し、下記のとおり、有給休暇届を提出した。
(1)21年9月9日……同月13日から同月15日分
(2)21年12月8日……同月11日分
(3)22年1月3日……同月6日分
(4)22年1月16日……同月13日分(病気のため振替)
(5)22年1月22日……同年2月14日分(病気のため振替)
(6)22年2月16日……同月15日分(病気のため振替)

▼ Xは上記のとおり有給休暇届を提出した上、21年9月13日から15日まで3日間、22年1月13日および同年2月15日にそれぞれ休暇を取得したものとして、就業しなかった。なお、Y社は上記(1)ないし(6)の有給休暇届をいずれも受理せず、Xが就業しなかった日について欠勤扱いとした。

▼ Y社は、Xが上記のとおり、休暇を取ったこととして休んだ日をいずれも欠勤扱いとして、21年9月13日から15日までの3日分の賃金である4万4373円、22年1月13日分の賃金である1万4791円、22年2月15日分の賃金である1万4791円をXに支払う賃金からそれぞれ控除した。

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