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#496「Xセンター事件」鹿児島地裁

2019年10月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第496号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【Xセンター(以下、X社)事件・鹿児島地裁判決】(2018年1月23日)

▽ <主な争点>
休職期間満了による退職の有効性など

1.事件の概要は?

本件は、Aが業務中に事故(本件事故)に遭って負傷した等と主張して、X社に対し、安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求をするとともに、本件事故による傷病の治療のための休職期間満了を理由にX社がAを自然退職扱いとすることは許されない等と主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<X社およびAについて>

★ X社は、自動車貨物運送を業とする会社であり、鹿児島県内に本社を有するほか、福岡営業所や広島営業所等を有している。

★ Aは、平成19年9月にX社に正社員として雇用され、26年4月までトラック運転手として稼働し、その後、選果場におけるジャガイモの集荷に従事していたが、5月末、広島営業所への応援を命じられ、6月19日、同営業所における就労を開始した者である。

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<本件作業、休職期間満了による自然退職に至った経緯等について>

▼ Aは26年6月19日から同月21日までの3日間、広島営業所に隣接するY社の飲料工場内の製品積み場において、コンベアから次々と流れてくる飲料パック入りのケースをパレット上に5段重ねに積み上げる作業(以下「本件作業」という)に従事した。

▼ 同月22日朝、Aは何ら連絡なく就業開始時刻に出勤しなかったため、広島営業所の所長がAの滞在先のアパートに赴いたところ、Aは腰痛を訴え、休みたい旨申し出た。そこで、所長はAに対し、病院に行くなら本社に連絡するよう指示した。しかし、Aは医療機関を受診することはなかった。

▼ Aは翌23日以降も欠勤し、27日夕方、X社のトラックに同乗して本社に戻り、その後も欠勤を継続した。

▼ X社はAに対し、同年11月6日付「休職期間満了通知書」により、雇用契約が同月30日をもって休職期間の満了により終了する旨通知した。

★ X社の就業規則には「精神または身体上の疾患により、完全な労務提供ができない場合」は、「その必要な範囲で会社の認める期間」休職とし、「休職期間が満了した時点で、なお休職事由が継続し、復職できない場合」は自然退職とする旨定められている。

▼ さらに、X社はAに対し、28年2月12日付文書により、Aが26年6月29日付で休職扱いになり、その後、休職期間である5ヵ月を経過しても回復がみられなかったことから、就業規則に定める「休職期間が満了した時点で、なお休職事由が継続し、復職できない場合」に該当するので、同規定の自然退職事由になるとして、同年11月30日をもって法的に雇用契約が終了している旨通知した。

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<Aの治療経過、労働基準監督署による労働者災害補償保険給付決定(労災認定)等について>

▼ Aは26年6月30日以降、外傷性頚椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症の急性増悪、神経障害性疼痛等の傷病名により通院し、27年10月31日に症状固定とされた。

▼ Aは労働基準監督署に対し、26年6月19日の本件作業時に外傷性頚椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症の急性増悪、右足関節炎、神経障害性疼痛、外傷性腰椎椎間板ヘルニアの傷害を負い、同年10月31日まで療養のため労働できなかったとして、同年11月、休業補償給付および休業特別支給金の支給を請求し、同労働基準監督署は27年3月、Aの上記負傷は業務上の事由によるものであると認められるとして、休業補償給付および休業特別支給金を支給する旨の決定をした。

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