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#269 「ピーエムコンサルタント事件」大阪地裁

2010年9月29日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第269号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【ピーエムコンサルタント(以下、P社)事件・大阪地裁判決】(2009年7月16日)

▽ <主な争点>
在職中の競業行為等を理由とする懲戒解雇と退職金等

1.事件の概要は?

本件は、P社在職中の競業行為等を理由に懲戒解雇されたXが雇用契約上の退職金請求権に基づき退職金等の支払い、不法行為に基づき慰謝料等の支払いを同社に対し、求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<P社、XおよびS社について>

★ P社は、国や自治体の公共工事を中心に土木工事等のコンサルタント委託業務を主要な事業とする会社である。

★ Xは、平成3年10月、P社に正社員として入社し、19年3月に退職するまで技術管理部主任として勤務した。Xの業務としては、P社が受注した公共工事等のコンサルタント業務(現場技術業務)において、現場の事務所に担当技術者として出向して業務に従事することが多かった。

★ S社は、建設コンサルタント・補償コンサルタントを主たる業務内容とし、P社と競業関係に立つ同業他社である。

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<P社の就業規則、退職金規程等について>

★ P社の就業規則(以下「本件就業規則」という)には、以下の定めがある。

【制裁】
第48条
 従業員が次の各号の1に該当するときには、次条の規程により制裁を行う。
(1)重要な経歴を偽る等、その他不正手段によって入社したとき
(2)本規程にしばしば違反したとき
(3)素行不良にして社内の風紀、秩序を乱したとき
(4)業務上の怠慢または監督不行届によって、災害事故を引き起こしたとき
(5)故意に業務の能率を妨げたとき
(6)正当な事由なく、しばしば無断欠勤し、業務に不熱心なとき
(7)許可なく会社の物品を持ち出したり、持ち出そうとしたとき
(8)会社の名誉信用を傷つけたとき
(9)会社の機密を洩らしたり、洩らそうとしたとき
(10)在職中に退職の承認(許可)なく他に雇用されたとき、又は雇用を条件とする行為を行った場合
(11)業務上の指揮、命令に違反したとき
(以下略)

【制裁の種類、程度】
第49条
 制裁はその情状により、次の区分によって行う。
(1)訓戒 始末書を取り将来を戒める。
(2)減給 最近3ヵ月間の平均手取賃金の100分の1から10分の1の範囲で行う。
(3)出勤停止 7日以内の出勤を停止し、その期間の賃金を支払わない。
(4)懲戒解雇 予告期間を設けることなく即時解雇する。
(以下略)

★ P社の退職金規程には、「従業員の退職が懲戒解雇に該当する場合は、原則として退職金を支給しない」旨の定めがある。

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<Xが退職するに至った経緯等について>

▼ 平成19年2月6日頃、XはP社に対し、一身上の都合により、同年3月30日をもって退職したい旨の退職願(以下「本件退職願」という)を提出した。

▼ 同月21日、Xは有給休暇を取得し、近畿地方整備局姫路河川国道事務所において行われた平成19年度山崎維持出張所現場技術業務に関するヒアリングにS社の予定担当技術者として出席した。なお、この案件にはP社も応札しており、担当者であったAと同事務所内で出くわした。

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