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#425 「X空港事件」大阪地裁

2016年11月30日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第425号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【X空港(以下、X社)事件・大阪地裁判決】(2014年9月19日)

▽ <主な争点>
元従業員らからの退職功労金の請求など

1.事件の概要は?

本件は、X社の元従業員Aらが、同社が労働組合に交付した書面に記載されていた退職功労金の支給基準は就業規則と一体のものとして労働契約の一内容になっているとして、X社に対し、労働契約に基づき、退職功労金等の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<X社およびAらについて>

★ X社は、昭和40年に空港における地上ハンドリングサービス業務を主たる目的として設立された会社である。

★ Aら8名は、いずれもX社の元従業員である。なお、Aら元従業員はいずれも定年退職するまで20年以上勤続しており、その在籍中10年皆勤表彰を受賞している。

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<X社の退職功労金に関する定め等について>

★ X社の旧退職金規程7条は、退職功労金について「在籍中に特に功労があった者に対しては基本退職金の計算の範囲内での功労加算として加給する」と定めていた。

★ X社は労働組合(以下「本件組合」という)からの退職功労金増額等の要求に対して、昭和55年10月、退職功労金の額を1年につき25,000円に引き上げる旨回答したが、協定書の作成には応じず、書面(以下「55年書面」という)を本件組合に交付した。同書面には「退職功労金について、内規として取扱うことを連絡いたします。1.退職金規程7条による勤続年数の算定により、勤続20年以上、かつその在籍中10年皆勤表彰を受賞し、定年退職した社員に対し、勤続1年につき25,000円を退職功労加算とする。」(以下「55年基準」という)との記載があった。

★ X社はその後、55年基準にしたがって退職した従業員に対し退職功労金を支給していたが、平成12年3月頃、9年4月から退職者に対して退職功労金を支払っていなかったことが判明し、本件組合が団体交渉を通じて同社に抗議していた。

▼ X社は12年6月、55年基準を「会社の名誉や業績に著しく貢献したと判断され、役員上申または殉職の場合、委員会を開催し、業績に応じ功労金支給の有無、支給額を決定する(定年または在職年数不問)」等と改訂し、新たな内規(以下「12年内規」という)として制定した。なお、同社は12年内規の制定以降に退職した従業員に対しては退職功労金を支給していない。

▼ 13年11月、X社は旧退職金規程7条について12年内規と同様の基準を定め、「在職中に特に功労があった者および殉職した者」には功労金(支給額は都度決定)を「支給することがある」と改訂した。

▼ 20年3月、X社は本件組合と退職功労金条項を削除した労働協約(以下「本件労働協約」という)を締結し、同年4月、退職金規程について上記協約と同様に退職功労金条項を削除する改訂をした。

3.元社員Aらの主な言い分は?

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