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#226 「都市開発エキスパート事件」横浜地裁

2009年2月4日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第226号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 参考条文

★ 労働組合法 第17条(一般的拘束力)

「一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の4分の3以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。」

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■ 【都市開発エキスパート(以下、T社)事件・横浜地裁判決】(2007年9月27日)

▽ <主な争点>
賃金引下げを許容した労働協約の一般的拘束力

1.事件の概要は?

本件は、退職したXが、T社による賃金減額が無効であると主張して、雇用契約に基づき、未払い賃金の支払いを同社に対し、求めたもの。

なお、T社はGS社の子会社であり、XはGS社との間で雇用契約を締結した後、T社に転籍し、定年退職した。

主な争点は、Xが加入していない労働組合が、GS社およびT社と締結した労働協約がXに適用されるか否かである。

2.前提事実および事件の経過は?

<T社およびX等について>

★ T社は、平成13年6月、主に都市基盤整備公団(現在の独立行政法人 都市再生機構)から工事管理業務等を請け負っていたGS社の子会社として設立された会社であり、土木・建築および造園工事等の設計・施工および管理等を主な業務としている。

★ 同社は東京都中央区に本社を置き、他に支店、営業所等を有していない。18年3月末現在で、46名の従業員および4名の役員が在籍しているが、そのうち本社に勤務しているのは、同社代表者を含めて4名のみである。

★ X(昭和21年生)は、昭和58年5月、GS社との間で雇用契約を締結し、以降、主として土木・建築工事の施工管理の業務に従事した。平成13年7月、T社に転籍し(以下「本件転籍」という)、同社との間で雇用契約を締結した。

▼ 本件転籍後、XはGS社に出向し、K事務所に勤務していたが、17年11月、N事務所に勤務するようになり、18年7月、T社を定年退職した。

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<本件賃下げおよび本件労働協約等について>

▼ Xの本件転籍後の賃金は、当初年額819万6000円(月額68万3000円)であったが、14年4月には9%削減され、年額746万4000円(月額62万2000円)となり、15年4月にはさらに5%削減されて、年額709万円(月額59万0900円)となった(以下、これら賃金の引下げを「本件賃下げ」という)。なお、Xと同時にT社に転籍した他の従業員の賃金も同様に減額された。

▼ 本件賃下げに強い不満を持っていた全統一労働組合T社部会(以下「本件組合」という)は、16年6月、GS社およびT社との間で、双方協議の上、次のとおりの労働協約を締結した(以下「本件労働協約」という)。なお、Xは本件組合に加入していなかった。

1.GS社は、組合員のT社への転籍時の以下の労働条件等が遵守されるよう、T社に対して必要な支援を行っていくものとする。
(1)満63歳までの雇用を確保するものとし、満60歳以降は嘱託社員とし、一年更新による雇用とする。
(2)賃金については、次による。
    16年度については、現行賃金とする。
    満60歳以降は、転籍時年収の50%とする。

(第2項以下、略)

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