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#574 「春秋航空日本事件」東京地裁

2022年11月2日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第574号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【春秋航空日本(以下、S社)事件・東京地裁判決】(2021年7月29日)

▽ <主な争点>
有期雇用契約更新での賃金減額の有効性など

1.事件の概要は?

本件は、S社との間で有期雇用契約を締結し、これを更新したXが、(1)更新の際に賃金を減額したことは無効であり、Xは減額前(更新前)と同額の賃金請求権を有すると主張して、同社に対し、2017年11月分から2018年9月分までの減額前の賃金と既払賃金の差額合計203万5000円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めるとともに、(2)病気欠勤をしていたXが復職可能となった日である2018年12月1日から退職日である2019年4月19日までの賃金が支払われていないなどと主張して、未払賃金(ただし、上記のとおり、減額は無効であるとして減額前の賃金額を基礎としている)の合計231万6666円およびこれに対する遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<S社およびXについて>

★ S社は、2012年9月に設立された国内および国際航空運送事業等を目的とする会社である。

★ X(1954年生の男性)は、2013年9月、S社との間で契約期間を1年間、賃金を月額40万円とする有期雇用契約を締結し、施設管理および購買業務を担当していた者である。2014年4月、Xは新設された購買施設課の課長職に任命され、その際、賃金は月額50万円に引き上げられた。


<XとS社との間の雇用契約、雇止めおよび退職に至った経緯等について>

★ その後のXに係る経緯の概要は、以下のとおりである。

[2014年]
10月 1日 正社員への変更(賃金月額50万円)
10月31日 定年による退職、契約期間1年間の契約社員として雇用継続(賃金月額50万円)

[2015年]
11月 1日 上記雇用契約と同じ内容で契約更新

[2016年]
11月 1日 上記雇用契約と同じ内容で契約更新
12月 1日 組織変更により購買施設課が廃止されたことに伴い、総務課所属の購買・施設管理担当(一般職)へと配置転換

[2017年]
11月 1日 契約期間2ヵ月間、賃金減額(賃金月額31万5000円)とする労働条件を記載した雇用契約書(以下「本件雇用契約書」という)にXが署名押印してS社に提出

[2018年]
1月 1日 契約期間10ヵ月間、賃金は上記減額後の金額で契約更新
10月 4日 病気欠勤となる(同年9月、うつ病の再発と診断)
10月19日 S社はXに対し、同月31日の期間満了をもって労働契約を終了し、更新しない旨を通知

[2019年]
1月24日 Xによる労働審判申立(雇用契約上の地位確認請求、上記賃金減額による差額賃金請求)
4月17日 上記雇止め撤回
4月18日 労働審判(地位確認、差額賃金相当額の支払等)に対し、相手方(S社)が異議申立
4月19日 XがS社を自己都合により退職

[2021年]
4月 6日 S社が2019年1月22日から4月19日までの賃金(月額31万5000円として計算)および遅延損害金を弁済供託

★ なお、労働審判申立においては賃金減額による差額賃金相当額の支払のほか、上記雇止めを無効として労働契約上の地位確認も求め、労働審判において認容されていたが、同審判後XはS社を自己都合により退職し、本件においては賃金支払請求のみにつき判決がなされた。

3.元社員Xの主な言い分は?

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