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#505「日産自動車事件」横浜地裁

2020年2月5日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第505号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【日産自動車(以下、N社)事件・横浜地裁判決】(2019年3月26日)

▽ <主な争点>
経営上の重要事項の企画立案を行う課長職の管理監督者性など

1.事件の概要は?

本件は、N社の課長職を務めていたXの妻であるYが、Xの死亡によりその賃金請求権の3分の2を相続したとして、N社に対し、(1)雇用契約による賃金請求権に基づき、平成26年9月から28年3月までの時間外労働分につき、労働基準法(労基法)上の割増率による割増賃金524万7958円および遅延損害金ならびに(2)労基法114条の付加金支払請求権に基づき、(1)と同額の付加金および遅延損害金の支払を求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<N社、XおよびYについて>

★ N社は、自動車の製造、販売および関連事業を主な事業とする会社であり、日本を代表する自動車メーカーである。

★ X(昭和49年生)は、平成16年10月までにN社と期間の定めのない労働契約を締結し、同社において稼働していたが、28年3月、社内で執務中に倒れ、脳幹出血で死亡した者である。

★ YはXの配偶者であって、Xの死亡後、婚姻前の氏に復した者である。なお、Xの相続人はYおよびXの両親である。

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<XのN社における役割等級、職務内容、待遇等について>

★ XはN社において、役割等級N2職(課長職)の管理職であり、25年4月よりダットサン・コーポレートプラン部でマネジャー、28年2月より日本LCVマーケティング部でマーケティングマネジャーとして従事した。なお、N社の従業員は28年3月末時点で2万2471名、N2職は1700名前後である。

[ダットサン・コーポレートプラン部]
★ ダットサン・コーポレートプラン部はN社経営陣に対して確約した利益(コントラクト)の実現に要する企画立案と実行を担い、実行に必要な全ての権限(各ファンクションの長への指揮命令権限等)を有する部署である。

★ Xが所属していた当時の構成は、N1職(部長職)のプログラムダイレクター(PD)、N1職の次席プログラムダイレクター、N2職の主担・マネジャー2名(X含む)、PE1職(課長代理職)のスタッフ2名の合計6名であった。PE1職のAはXの業務の補助を行っていた。

★ マネジャーは、PDが担当車種の投資額と収益率をCEOを含む経営陣に確約する商品決定会議(PDM会議)に出席するほか、各部門の長から製品原価と販売価格の基礎となる数字について約束を取り付ける権限を有している(ファンクションリプライ)。

★ また、マネジャーはコントラクトの進捗確認と過未達を担当執行役員らに報告する会議(PCMPP会議)で、議事運営や報告、ファンクションリプライに未達の責任者に対する求釈明などを担当していた。

[日本LCVマーケティング部]
★ 日本LCVマーケティング部は、ブランディング・マーケティング戦略の企画立案や予算管理等を主要な業務とする。同部にはマーケティングチームと商品企画チームがあり、Xが所属していた後者の人員構成(当時)は複数のチームを統括するN1職のマーケティングダイレクター、N2職のマーケティングマネジャー2名(Xを含む)および一般職スタッフ等5名であった。XにはPE2職の部下が1名いた。

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