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#539 「学校法人A学園(試用期間満了)事件」那覇地裁

2021年6月9日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第539号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【学校法人A学園(試用期間満了)事件・那覇地裁決定】(2019年11月18日)

▽ <主な争点>
コミュニケーション能力不足等を理由とした試用期間満了時の解雇など

1.事件の概要は?

本件は、Xが学校法人であるA学園に日本語教師として採用され、延長後の試用期間満了時に、主としてコミュニケーション能力の不備を理由に解雇されたところ、Xは必要なコミュニケーションをとり、また、このような指導はほとんど受けていなかったのであり、同解雇には客観的合理性がなく、社会通念上相当ともいえないから無効であるとして、同学園に対し、労働契約上の権利を有する地位にあることの仮の確認ならびに解雇された平成30年12月から令和元年7月分の賃金および8月分以降、本件判決確定の日までの賃金の仮払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<A学園およびXについて>

★ A学園は、国際的に卓越した科学技術に関する教育研究を行うことにより、沖縄の自律的発展と世界の科学技術の向上に寄与することを目的とする学校法人である。

★ Xは、A学園に日本語講師として採用され、平成30年6月1日から令和2年5月31日までの期間(当初の3ヵ月間は試用期間)の定めのある労働契約を締結した者である。なお、Xは週に5日、学生や職員が任意で受講することができる日本語教育の授業を受け持っていたほか、学生や職員の言語補助の業務に従事していた。

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<本件解雇に至った経緯等について>

▼ Xは30年8月、A学園の副学長らと今後についての会議(以下「本件会議」という)を行った際、コミュニケーションスキルおよび協調性への不安を理由に試用期間を3ヵ月間延長されるとともに、これらについて改善を求められた。

★ 本件会議において、A学園はXのコミュニケーション上のトラブルについていくつか事例をあげた。その一つとして、採用後初めての学部ミーティングの場で、Xがランチミーティングについて、「食べているときに話したくない」などと話し合い自体をはねつけるような言動をしたことがあった。

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