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#466 「国立大学法人 H大学事件」神戸地裁

2018年7月18日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第466号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【国立大学法人H大学事件・神戸地裁判決】(2017年8月9日)

▽ <主な争点>
在職中長年にわたって仕事を与えられなかったことについての損害賠償請求など

1.事件の概要は?

本件は、H大学の職員であったXが在職中長年にわたって仕事を与えられず、差別的な扱いを受けるなどの嫌がらせをされて精神的苦痛を受けたと主張し、同大学に対し不法行為または債務不履行に基づき、550万円の損害賠償を求めたもの。

なお、XはH大学の課長、課長補佐に対する監禁、強要等の行為を理由として懲戒解雇により退職しており、これらの行為によりXは強要罪で起訴され、有罪判決を言い渡されている。

2.前提事実および事件の経過は?

<H大学およびXについて>

★ H大学は、平成16年4月に成立した国立大学法人である。

★ Xは、平成元年4月に文部事務官として採用され、H大学(国立大学当時)の教務部教務課に配属された者である。Xは16年4月、H大学(国立大学法人)が成立したことに伴い、国家公務員としての身分を失い同大学の職員となった。

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<Xの懲戒解雇に至るまでの経緯等について>

▼ Xは9年11月5日から10年2月18日までの間、4日間を除き、自律神経失調症等を理由として病気休暇を取得した。

▼ H大学の学長は10年2月19日、同日から5月5日までを期間として、国家公務員法によりXを休職にした。Xは同年4月22日、復職した。

▼ 14年4月、Xは学長あてに上申書を提出した。その内容は「復職した自分に与えられた仕事は週に1、2回の大学構内の見回りと年に4、5本のテープ起こしだけである。座席の配置についても一人だけ机を離されて窓口に背を向けた格好で窓際の壁際に追いやられている」などと訴えるものである。これに対し、大学からの応答はなかった。

▼ 17年4月に着任した総務課長は当時国会議員の秘書を務めていたXの知人から電話を受け、Xに仕事が与えられていないという話を聞き、Xらと面談した。

▼ H大学は24年2月23日にXを懲戒解雇した。その理由の概要は下記のとおりである。
                記
 平成23年8月22日、自分の休暇簿等の取扱いが公正でないと主張していたXは学術情報課課長補佐とそれをめぐってトラブルとなって激昂し、同課長補佐に対し、「おまえなめとんのか、ちゃんと書かんかい」などと怒鳴りつけ、呼び出した同課の課長と同課長補佐の2人を前にして「もうどうなってもかまわない」「おれが暴れても初犯やから次の日歩いてるけど、あいつ(課長補佐)は一生かたわや」などと大声で叫び、恫喝した。
 その後、同課長補佐に対し、「奥さんと子どもに聞いてみましょうか、家に行って」などと発言し、同課長に対し、「わび入れろや」などと怒号した上、ドアを施錠してその前に座り、「土下座せい、頭、足蹴にしたろか」などと大声で叫んで同課長を恫喝し、複数回土下座させた。また、革靴を履いたまま、同課長を長時間正座させた。こうして少なくとも1時間30分にわたり同課長と同課長補佐が室内から出ることを著しく困難にした。
 Xのこれらの言動により、同課長と同課長補佐は精神的に著しい苦痛を受け、長期間にわたり療養を余儀なくされ、学術情報課の円滑な業務の運営が妨げられた。

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