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#167 「日光丸船長事件」広島地裁(再掲)

2006年12月27日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第167号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【日光丸船長事件・広島地裁判決】(2006年1月30日)

▽ <主な争点>
雇入契約の解除/普通解雇の効力と船員法

1.事件の概要は?

本件は、N丸(以下「本船」という)の船主であるYが船長Xとの雇入契約および雇用契約を解除したのは無効であるとして、Xが船長としての雇入契約および雇用契約上の地位を有することの確認を求めるとともに、雇入契約または雇用契約に基づき、未払い賃金等の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<XおよびYについて>

★ Xは平成元年1月、本船の船主から、船長として就労するよう命ぜられ、この雇入契約により、主に広島港に停泊中の船舶に給油する作業に従事していた。

★ Yは2年2月、相続により本船に対する賃借人としての地位を承継取得し、Xの雇入主および雇用主となった。その後、8年4月には本船を買い受けた。

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<本件雇入解除および本件解雇に至った経緯>

▼ 本船の業務は、ほとんどがS社からの発注によるものであったところ、8年1月頃から、同社のオーダーにより、コンテナ貨物船R丸への給油を行うようになった。

▼ R丸の構造上、給油に危険が生じることや入港遅れによって時間外作業が多発したため、Xや本船の乗員は、YにR丸の給油を断ることや時間外手当の支給を求めたものの、受け入れられなかった。

▼ Xは時間外手当の支給に関して、船員から苦情を持ち込まれる一方、Yらへの要求が受け入れられなかったことから、同年5月、S社に対して、同社がオーダー元と交渉して船員に夜間割増を直接支給してもらえないかという提案を書面で行った(以下「本件提案書」という)。結局、その後も割増賃金は支給されなかった。

▼ 同年11月、YはXに無断で本船を出港させて業務を行ったり、雇用契約および雇入契約を解除する旨通知して退職を求めたりした。また、Yが本船の機関室等の入口の鍵を取り替えたため、Xがこれを取り外して出港したことがあった、

▼ Yは同月、書面でXとの間の雇入契約および雇用契約を解除する旨の意思表示をした(以下、同雇入契約の解除を「本件雇入解除」といい、同雇用契約の解除を「本件解雇」という)。

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<船員法(以下「法」という)の規定について>

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