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#383 「独立行政法人 国立がん研究センター事件」東京地裁

2015年4月1日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第383号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【独立行政法人 国立がん研究センター(以下、Gセンター)事件・東京地裁判決】(2014年4月11日)

▽ <主な争点>
期間の定めのある看護助手の雇止めなど

1.事件の概要は?

本件は、Gセンターとの間で期間の定めのある雇用契約を締結していたX(看護助手)が、同センターが行った、雇用契約を更新しない旨の意思表示の効力を争い、Gセンターに対し(1)労働契約上の地位確認、(2)上記雇用契約の期間満了日の翌日から判決確定の日までの賃金の支払いを求めたもの。

Gセンターは、平成22年4月1日、国が運営していた「国立がんセンター」を前身として、独立行政法人通則法等に基づき設立された独立行政法人である。

21年4月1日、国はXを国立がんセンター東病院看護部における非常勤の看護助手として任用し、その後、22年4月1日、GセンターがXを非常勤職員として23年3月31日までの任期で雇用することとして、雇用契約(本件雇用契約)を締結したが、24年2月、同センターはXに対し、同年3月31日をもって本件雇用契約の期間は満了し、再度の雇用も行わない旨伝えた。

2.前提事実および事件の経過は?

<GセンターおよびXについて>

★ Gセンターは、平成22年4月、国が運営していた「国立がんセンター」を前身として、独立行政法人通則法2条1項および高度専門医療に関する研究等を行う独立行政法人に関する法律2条に基づき設立された独立行政法人である。なお、同センターは設立時から現在まで看護助手を常勤職員として雇用したことはない。

★ Xは、21年4月1日、国により国立がんセンター東病院看護部(千葉県柏市所在)における非常勤の看護助手として、「任期:1日。ただし、任命権者から別段の通知がない場合は22年3月31日までの間にかぎり任用を日々更新する。賃金:1時間当たり864円」等の条件で任用された者である。

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<本件雇止めに至った経緯等について>

▼ Gセンターは、22年2月、看護助手を対象に同センターにおける非常勤職員の採用試験に関する説明会(以下「本件説明会」という)を開催し、Xも出席した。

★ 本件説明会では、国立がんセンターの運営局次長または庶務課長により、(1)設立後のGセンターに雇用されることを希望する者は非常勤職員の採用試験(面接)を受ける必要があり、その申込みを怠ると同センターからの採用の機会を失うこと、
(2)非常勤職員として採用された場合、雇用契約の期間は1年以内であること、
(3)採用の繰り返し(再雇用)は前提としていないこと、ただし、運営上やむを得ない場合の取扱いとして、原則3回(採用初年度を1回とする)を限度とすること等が説明された。

▼ 22年4月1日、GセンターはXを非常勤職員(業務技術員)である看護助手として、「任期:23年3月31日まで。賃金:1時間当たり1150円。勤務場所:Gセンターの東病院(以下「本件病院」という)看護部」等の条件で雇用契約を締結した。

▼ 23年4月1日、Gセンターは再びXを、任期を24年3月31日までとする非常勤職員である看護助手として雇用することとし、Xとの間で雇用契約(以下「本件雇用契約」という)を締結した。なお、任期以外の条件は前年度と同様であった。

▼ 24年2月、GセンターはXに対し、同年3月31日をもって本件雇用契約の期間は満了し、再度の雇用も行わない旨伝えた(以下「本件雇止め」という)。Xはこれを不服として、同センターの理事長に対し、24年4月1日からの雇用継続を求める旨の申込書を提出した。

3.看護助手Xの主な言い分は?

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