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#316 「国立大学法人 乙大学事件」東京地裁

2012年8月1日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第316号で取り上げた労働判例を紹介します。

■ 【国立大学法人 乙大学(以下、乙法人)事件・東京地裁判決】(2011年8月9日)

▽ <主な争点>
訓告処分後に行われた停職処分の効力など

1.事件の概要は?

本件は、乙法人に勤務する国語教師であったXが、同法人が平成22年5月26日付でXに対してなした停職3ヵ月の懲戒処分(以下「本件停職処分」という)は、21年9月17日付でXに対してされた訓告処分と同一の事実を懲戒事由とするものであって、二重処分ないし信義則違反に当たり無効である旨を主張して、乙法人に対し、本件停職処分の無効確認並びに停職期間中の未払い賃金および賞与の支払いを求めたもの。

2.前提事実および事件の経過は?

<乙法人およびX等について>

★ 乙法人は、乙大学、同附属小・中学校等を運営する国立大学法人である。

★ Xは、平成8年4月より乙大学教育学部附属小学校の、12年4月より乙大学教育学部附属中学校(以下「本件中学校」という)の教諭となり、23年3月までの間、乙法人に勤務していた者である。なお、Xは平成20年度において、本件中学校の国語科の教科主任であった。

★ A教諭およびB教諭はともに本件中学校の専任教諭(国語担当)となり、乙法人に勤務している者である。

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<平成21年度入学試験の実施と採点ミスの発生等について>

▼ 21年2月3日、本件中学校の入学試験(以下「本件入学試験」という)が実施されたが、国語科の採点のうち、記述問題および作文問題の採点はX、AおよびBの3名が担当し、それ以外の選択問題等の採点は他教科の教諭が担当した。

★ 本件入学試験の国語科の採点に使用された模範解答には、作文問題(10点)以外の問題の配点が記載されており、その合計点は90点となるはずであったが、実際には90点に満たないものであった。しかし、減点方式で採点していたことから、採点者らは配点が足りないことに気がつかなかった。また、記述問題やそれ以外の箇所で複数の採点漏れがあったが、採点者らはこれらを発見することができなかった。

▼ 本件入学試験では同月17日までに試験問題と模範解答を入学選考委員長であるC主幹教諭に提出することが決められていた。そこで、Xが模範解答の再点検を行ったところ、配点の合計が100点にならないことに気がついた。しかし、XはそのことをA教諭およびB教諭のみに告げ、管理職等への報告は行わず、模範解答の配点を100点満点となるように修正した上で提出した。

▼ また、Xは金庫内に保管されていた解答用紙の束をチェックしたところ、小問について採点がされていないと見られる解答用紙を発見したが、採点漏れの事実をA教諭のみに告げ、管理職等への報告は行わなかった。

▼ 同年4月、A教諭は本件中学校の他の職員に対し、本件入学試験における国語科の試験問題につき、配点ミスを犯したのにこれを修正したものを提出したことおよび採点漏れがあったことを申告した。

▼ A教諭の上記申告に基づき、関係者に対する調査および再点検が行われた結果、Xが発見した箇所およびそれ以外の複数個所に採点漏れがあったことが判明し、最終的に同年6月にはそれらのミスを総合すると受験者の合否に影響があり、4名の合格者を追加する必要があることが判明した。

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<本件訓告処分および本件停職処分等について>

▼ 21年6月、乙法人はXに対し、自宅待機(同月18日から同年9月30日までの間)を命じるとともに、その間、保護者等と一切連絡を取らないよう命じた。

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