#420 「ホンダエンジニアリング事件」宇都宮地裁(再々掲)
2016年9月21日に配信した「会社にケンカを売った社員たち」第420号で取り上げた労働判例を紹介します。
■ 【ホンダエンジニアリング(以下、H社)事件・宇都宮地裁判決】(2015年6月24日)
▽ <主な争点>
懲戒解雇の手続き的要件としての弁明機会の付与など
1.事件の概要は?
本件は、H社の従業員であったXが同社から懲戒解雇されたが、Xには懲戒解雇事由がなく、また、懲戒解雇手続が違法であることや懲戒解雇が処分として重すぎることからすると相当性を欠くため無効であり、自らの意思で辞職したものであるとして、退職一時金82万円余の支払を求めるとともに、在職中に上司から過重労働を強要されるなどのパワーハラスメントを受けたとして、慰謝料150万円等の支払を求めたもの。
2.前提事実および事件の経過は?
<H社およびX等について>
★ H社は、自動車エンジン・車体等の金型、設備製造等を業とする会社である。
★ Xは、平成18年1月、H社との間で雇用契約を締結し、P/T(POWER TRAINの略であり、動力伝達系部品製造設備の金型製造の意味)金型設計ブロック設計グループ設計チームに所属していた者である。
★ Xの上司は、Xが所属するチームの責任者であるチームリーダーと称する立場の者であり、その上司として設計グループを統括するグループリーダーと称する立場の者がおり、さらにその上司としてP/T金型設計ブロックを統括するブロックリーダーと称する立場の者がいた。
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<H社の就業規則の定めについて>
★ H社の就業規則2条12号には「会社の規則、業務命令および業務指示を遵守せず、またはこれに反抗したとき」との懲戒事由、同規則2条10号には「無届欠勤14日以上にわたったとき」との懲戒事由が定められており、同規則3条には「第10条ないし第22条に該当するときは諭旨解雇、または懲戒解雇に処する。ただし情状により軽減することがある」との定めがある。
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<本件懲戒解雇とその後の経過等について>
▼ Xは25年6月10日頃から出社を拒否するようになり、H社と面談したところ、「自分のやりたいことをかなえたいので欠勤している、希望どおり異動できるまで出社しない」と述べた。
▼ H社はXに対し、同年8月2日、同日開催された賞罰委員会の審議の結果を受け、Xの行為が上記就業規則2条12号および10号に該当するとして、懲戒解雇を申し渡した(以下「本件懲戒解雇」という)。
▼ XはH社に対し、同年8月20日、同月31日付をもって退職する旨を願い出たが、同社は8月3日付で雇用契約が終了しているとして、退職願をXに返送した。
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